なるようになる、なるようにしかならない

やっぱり基本世界が閉じてるので、なんか広げたいなあと思いつつ、落ち着いて考えたらそれはそれで止まっちゃったりしそうでもあり。



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「さすが先輩ですね」
「いや、別にそういうわけじゃないでしょ」


 ちょっと困り顔で頬をかく先輩の手には、びっしりと文字が書き込まれたメモ。それは全部、本のタイトルだ。


「あれだけいろんな人に薦めてもらえるなんて、なかなかないですよ」


 そう、ついさっきまで部室でオススメ攻勢にさらされていた先輩なのでした。来るもの拒まずのうえに、読んだ分にはきっちり感想をあげてくるもんだから、薦める方もその甲斐がある、ってことらしい。うん、気持ちはわかる。スルーされちゃうとやっぱり寂しいし。


「それでもさ、ものには限度ってのがあると思うんだけど」


 どうすんのさこんなに、とぼやく先輩。
 なんだけど。


「でもちゃんと全部読むんですよね。で、困ってるのって、どうやって揃えようか、とかそんなことなんでしょ、どうせ」
「いや、まあそりゃね?」


 折角だしもったいないじゃん、とかなんとか言いながら、どうしよっかなあホント、なんて遠い目をしてる。まったく、普通はそこが悩むところじゃないですよ。だからこれだけいろんな人に愛されてるんじゃないですか——とは、あえて言いません。本人は気づいてるのかな、どうなのかな。……気づいてないんだろうなあ、っていう辺りが、またどうしようもないくらいに先輩らしいですけど。


「先輩って本当、どこまでいっても先輩ですね」
「どういう意味さ」
「いい意味で、です」



 あー僕もそんなふうになりたいなー、と冗談めかして言ってみると、何を言ってるんだこいつは、という顔をされた。え、何どういうこと?


「君にも熱烈なファンがいるじゃん」
「ファンって……いやあれそもそもどうなんですか」
「だから人気なんだって。先生の書くモノ毎日楽しみにしてます! ってのがさ、ほらここにも一人」


 ぐ……あれは内容的にいろいろどうかなあって思うところは多々あるし、そもそも僕は読む方の人間なわけで書くのはおまけっていうか気の迷いっていうか!


「なんだっていいよ。それであれだけ書けてるんだから、別にいいんじゃないの? 僕は楽しみだし」


 ここはきっとお礼を言う場面なんだろうけど、なんでかな、素直にそういう気分にはなれません。そもそも先輩が率先して書かせたりしてるわけで。


「だからさ、僕は読みたいの。だったら書いてもらうしかないでしょ」


 今日も楽しみにしてるから、そう言われてしまえば、もはや僕には返しようもなく。


「前向きに善処します……」
「とか言っちゃってさ、書くんでしょ? 知ってる。無理矢理でも何でも、好きじゃなきゃ出来るわけないし」


 ……ええ、そりゃ本当にイヤだったら言いますけど。けど、さあ……はあ、もういいです。そういうことにしといて下さい。でも覚えといて下さいよ、これはこれで結構大変なんですから。


「だから、待つんなら過度の期待とかはやめといた方がいいですよ」
「いいのいいの、僕は信じてるから」
「はいはい」


 まったく、どうしてこうなっちゃったかなあ。そのうち反動でどっかに絶対ガタが来るよ、これ。
 でも、これがいつか何かの形になるかもしれない、そう考えたら、楽しくないっていうのも嘘なわけで、はあ、いろいろ難しいなあ。
 ともあれ、こうなった原因の何割かは絶対先輩にあるんですから、最後はちゃんと責任取って下さいよね、頼みますよ!



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いつかはいつかと言ってるうちはいつか、なのですが。