無題

他に書き残すところもないので。

書店で、と思っていたところに、創元社のいつものサイン本販売があったのでそちらで選んでしまった『現代詩人探偵』。
別に感想でもなんでもない何かを。
容赦なく無造作に内容には触れているものの、概ね個人的な述懐。


さて、ミステリ・フロンティアです。
紅玉いづきとミステリ、というと、やはりどこかアンマッチのようでいて、けれど「謎解き」はすべての物語の根底にある要素でもあるわけで、まさか間違ってもばりばりのアリバイだのなんだのといったものは来るはずないと思っていたところに、冒頭から「いつもの」感触。
ほらやっぱり、と言いたいところではあるものの、それを言うなら帯やらタイトルやらの時点で既に明らかであるので何を今更、が正直なところになるでしょうか。

最初はボーダーに立っているひとの話かとも思いましたが、すぐにそれは誤りで、作者曰くの「一線の向こうの話」と分かる筋立て。
そこにある種の安心を覚えてしまった……というのはいささか個人的な話なのでさておき。

要所要所、例えば「ミステリ作家が書いたらこうではないだろう」という着地点を見せるお話ですが、最たるは終章直前のあそこ。
「死して詩人となる、という道筋を示した人物がいたのではないか」——とまあ、だとすれば所謂「真犯人」はあの人しかいないのですが、そういう展開をどこか心の中に抱えたまま進んできていたのです。
が、そこに待っていたのは「紅玉いづきが書いたならばこうなるだろう」、そんな着地点。
詩作に向き合い、詩人であることに向き合い続けてきた登場人物達が、己の選択として辿り着いた場所がそうであった、という解答。
しんどい話、と作者は表現するのですが、そこに自分は救いに似た何かを見た気がします。
もちろんそれはあくまで当人達にとってでしかなく、周囲や残されたひとから見れば、やっぱり地獄——しかも続いていくそれ——でしかないのかもしれませんが。


……とまあ、それはそれとして。
随分と新作に間はあきましたが(電撃の短編連載的なものはあったとして)、やっぱり紅玉いづき紅玉いづきだったな、というのが一番シンプルな印象。
凛として、あるいはおっかなびっくり、時には不安げに、それは事と次第によって異なるとしても、何かに向き合い続ける彼ら彼女らがいる、そこは変わらない。
今月出るもう1冊も、きっとそんな話ではないのかなと思っています。
違ったら違ったら、またそれはそれで。
べにたま節全開のアレな話も読んでみたいとか……はまあ、ねえ?