ロスタイムどころの騒ぎじゃない

いやもう試合終了してるし。
じゃあなんなんだこれ、って聞いたらラブレターとかひどいこと言われました。
らぶはねーよらぶは。



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「やあ、悪いね」


 言葉とは裏腹に、ちっともそんなことを思っていないような様子で、ずずずずとうどんをすする先輩。別にいいんですけどね、すうどんだし。っていうかお昼がそれだけで足りるのかなあ……


「大丈夫大丈夫、なんなら食べなくても平気だし」
「とか言いながら、絶対後でふらふらするタイプですよね、先輩。いいです、待ってて下さい。なんかもう一品取ってきますから」


 平気だってば、という声も聞こえたけど、信用しちゃいけない。本当、ちょっとしたことで体調崩したり、あれで繊細——いや、なんかもっと相応しい言葉もある気がするんだけど、本人の名誉のためにあえて——なひと、なんだよなあ。自覚は全然ないみたいだけど。そういうとこ、わりと困る。ホントに。


「はいどうぞ」
「おにぎり……?」
「人間、米を食べておけばなんとかなります」
「……わりと君も適当だよね」
「まあ、財布を忘れてくる先輩には負けますけど?」
「違う。置いてきたの」


 忘れたんじゃない、と断固として言い張るけど、もう何度目なんですかそれ。月一企画とかじゃないんですから、もうちょっとなんとかしてほしいです。


「別にどっちだっていいですけどね……」
「じゃあ置いてきたってことで」
「はいはい」


 はあ、と溜息をついて、あらためて向かいの先輩を見やる。おにぎりを頬張るその顔はなんともお気楽な様子で、なんとなくこっちも力が抜けてしまう。頼りないんだか大物なんだか、まったく、ね。


「そんなんでよく一人暮らししてますよね……」
「だからさ、だいたいなんとかなるもんだって。それに」
「それに?」
「呼べば来てくれる、頼りになる後輩が居るしね」
「……いつでも行けるわけじゃない、ですよ」


 またいきなりそういうこと言うし! もう……ダメだ、やっぱりただの頼りない人、そうに決まってる!


「無理なときはいいって言ってるよね? 今でも十分助かってるしさ」
「その辺はわかってます。……まあ、でも呼ばれたら行きますよ、なんかほっとくと怖いですし」
「……あのさ、もしかしてバカにしてない?」
「いやいやまさかそんなとんでもない」
「あやしい……」


 だって、ほっといたら本に埋もれちゃう人だし、ねえ。もうちょっとしっかりしてほしいけど、そうなったらそうなったでちょっと寂し……くはないか、別に。
 ともあれ、まずは財布を忘れないようにする辺りからよろしくお願いしますね、本当に。どこかで路頭に迷っても知りませんからね!



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実際いろいろうっかり星人だと思います。
完璧超人でも困りますけどねー。