いやもうホントネタ切れなんで

今更この辺のヤツは「雑記」タグじゃない方がよかった気がしたけれど、面倒なのでそのままで。
あとで回収したい奇特な人は適当にがんばるんだ。
しかし自分で自分にネタがだだかぶりである。
引き出しが少なすぎる……



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「確かここら辺にあったはずなんだけど」


 どこだっけなあ、なんて言いながら、文字通りの「本の山」をひっくり返す先輩の姿に、溜息も出なくなったのはいつからだったか。思い返してみると……あれ、わりと最初のころだったような気がする。うん、そう、この人はこういう人なんだ、ときれいさっぱり割り切った遠い日の記憶。あの日の決断は間違いじゃなかったんだ。たぶん。
 とは言っても、うずたかく積まれた……じゃない、崩れてるし、こういうのはなんて呼べばいいんだろう。やっぱり本の山?
 とにかく、そんな光景を見ていると、どうしてこうなるかなあ、と思ってしまうのはいたしかたないところ。


「いや、だってクロネコさんが毎日持ってきてくれるし」


 そりゃあなたが注文してるからでしょうが。
 この辺に関しては、正直あまりひとのことは言えないんだけど、床に直積みするのは負けだよね、としみじみ思う。だってこれは、もはや惨状の一言しかない。この部屋で寝起きしてるって、それじゃ山が崩れてきて起こされるのも仕方のない話。自業自得を地でいく人、だよなあ。
 でも、良いか悪いかはともかくとして、そうなってしまう気持ちは十分すぎるくらいにわかってしまう。
 読みたい本があって、読める機会があったなら、それはどうしたって逃せない。
 追いかけている作者かもしれない、気になったタイトルかもしれない、表紙に一目惚れしただけかも、誰かに何かを聞いたからかも、理由なんていくらでもあるし、なんでもいい。ただ、そこにまだ知らない物語があって、それが知りたい、楽しみだっていう気持ちは、きっと他に代えられない何か、なのだ。
 それにこの人、本当に楽しそうに感想書くもんなあ。あれを見るとこっちも読みたくなるし、そういう見方もありか、と思うこともあって、読み散らかしてるだけの自分はどうなのかなあ、とちょっと遠い目をしたくなる。……むしろしてる。これは尊敬するよね、とは一度も面と向かって言ったことはないけど。だって言ったら逆に何言われるかわかったもんじゃないし? いや本当に。


「あー、あったあった、これこれ」


 絶対この辺にあると思ってたんだよね、と言いながら——しかしその背後には新たにいくつかの山が誕生している。それでいいんですか先輩——差し出された一冊の本。これよかったよ、というその言葉に、疑う余地なんて微塵もないわけで、ありがたく借りておくことにする。そんなにしょっちゅう会うわけじゃないから、返すのはいつになるかわからないけど、それはまあだいたいそんなもの。
 ともあれ、また新しい楽しみが増えたのはいいことだよね、そう思いながらあらためて本のタイトルを眺め……あれ?


「……先輩」
「ん?」
「これ、1巻って書いてありますけど」
「ああうん、そうそう。全二十巻で、面白くなるのは三巻からだから」


 残りはどっかいっちゃってすぐ見つからないから、自分でどうにかするように。
 そんな台詞に、さてどう返せばいいのやら。


「どうせすぐそろえちゃうでしょ? 知ってる知ってる」


 うわーその口調と表情がすごいむかつくんですけどー。ついでに言ってることがだいたいあってるのもすごいむかつくんですけどー。
 ……でもこの人はこういう人なので、そこに何かを言うのは今更過ぎる。
 そんなのも含めてこの人はこの人で、まあ、なんだ、その、わりと、とても、得難い類の友人、だと思ってます。それこそ、絶対口にはしないけど。


「はいはいそうですね」
「だからわかってるって。それじゃ感想よろしく」


 わかってて言ってんだろうなあこいつは、というお決まりのフレーズに、気が向いたら、とこちらも毎度の言葉を返して、今日はお開き。じゃあまたそのうち、そんな別れの挨拶をしてから、魔窟みたいな部屋を出て、ふう、と一息。
 手元には一冊の本。
 ぱらりぱらりとページをめくって、少しだけつまみ食いをしてから、もう一度表紙を見る。タイトルから何からいちいち好みで、どこかくやしいような、嬉しいような、複雑な気分。
 まあ、なにはともあれ。


「ありがとうございます、先輩」


 さて、早速帰ってから読んじゃおうかなあ! 楽しみ、楽しみ。



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ギャー(だからそれはもういい