……もうだめだ

昨日に引き続き、何かに追われるかのように。
このひとビョーキです!
自分的にはどう考えてもこっちの方がアレ。
だって先輩好きすぎるでしょうこのひと。
そして当初の構想になかったのでKさんもいないし……


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「めでたしめでたし、と」
 一通りの原稿を読み終えて、ふう、と溜息一つ。
「……いや、で、これどう思います?」
 苦笑いしつつの問いかけに返ってくるのは、面白いは正義、という短い返事。ごもっとも。
 実際、よくもまあこんなものに、なんて思ってしまうほどに、誰も彼もがいちいち本気で、やる気で、笑いあり涙ありのいい話。登場人物のモチーフが誰なのか、そんな野暮なことさえ考えないで素直に読めば、間違いなく面白い。
 とはいえ。
 とはいえ、これがどこから沸いてきた代物なのかを思えば、やっぱり苦笑いするしかないのも確かな話。よくやるよねえ……
 結局、お約束とは分かっていても、この一言がすべてのような気もする。
 つまり、そう——どうしてこうなった。いや、ホントにね。




「だったら書いてみれば?」
「別に、誰かのためなんて考えることないと思うけど」
 そもそも、自分のために読んでるんでしょ、と言うその顔は、絶対にこちらを面白がってるときのそれ。むむ。
「……じゃあ、何冊かちょっとずつやってみます」
「いやそこは全部やろうよ。読んだ分全部」
「いきなりハードル高いですよそれ!」
「やれば出来る」
「一緒にしないで下さい!」
「読み過ぎの方がおかしい!」




「で、先輩あれ読みました?」
「読んだ読んだ。面白いのがなんかくやしいんだけど」
「ですよね。ホント、みんな無駄にがんばってるって言うか」
「あ、でもあれは絶対おかしい。アイツは許さない!」
「えー、よかったじゃないですかあれ」
 口を開けば、だいたいいつもそんな他愛もない会話。
 時にオススメ本に背中を押し合って、あるいは足を引っ張り合って、気がつけばお互い同じものを読んでたり、そういうわりとどうしようもない関係。




「先輩って」
 と、口を開いてから、さて何を言ったものかと考える。言いたいことは、まあ、それこそピンからキリまでいくらでもある。その中からいったいどれを選ぼうか、ほんの一瞬だけ迷ってから。
「ほんと、先輩ですよね」
 結局それだけを口にした。
 何を言ってるんだこいつは、という顔をされたけれど、気持ちはだいたい分かる。そもそもわたし自身、いったい何を言ってるんだ、である。
 ——でも、まあ、いっか。
 そう思うのだ。
 何故って、今この瞬間、楽しいのは絶対に勘違いでも錯覚でもない。だから、別にいいんだ。いつか終わりが来るのは確かなことだけど、少なくとも今、わたしの目にタイムリミットは見えていない。かけられた魔法が解けるのには、まだまだ時間がある。
 だったら、それを精一杯楽しめばいい。


 それにほら。
 楽しいは正義、なんだから。

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誰か助けて!