『災獣たちの楽土1 雷獅子の守り』(尾白未果)

災獣たちの楽土1 - 雷獅子の守り (C・NOVELSファンタジア)

災獣たちの楽土1 - 雷獅子の守り (C・NOVELSファンタジア)

災獣と呼ばれる守護獣。
五つの国に五体の災獣、それぞれの国がそれぞれの災獣を祀る世界の物語。
全三巻構成、各巻ごとに主人公は変わるよ、という触れ込みでの第一弾は、タイトル通り雷獅子に守護された国のお話。


冒頭、なんかこうやる気の感じられない五島関係図(地図的なもの。必要があったかと聞かれると、別になくてもよかったと思う)を見たときは、あれ大丈夫かなこれ、と思いましたが、読み出してみれば先へ先へと引っ張ってくれるいい展開。
災獣たる雷獅子を名乗る少女の登場から幕を開ける本編は、失ってしまったもののために抗う人々の物語。
それでいいの、と感じる部分(将軍周り)もありましたが、次巻が当該国を舞台にした物語となるようなので、そちらを待って判断してもいいんじゃないかな、と。


先に引っかかったとこを書いておくと、各章終わった後のコミカルタッチのイラスト。
イラスト自体はいいんだけど、そこにそれ差し込んじゃうの、と少々首を捻ったのが正直なところ。
なんかこう、巻末おまけ4コマ的な……
適度なデフォルメっぷりは、非常に微笑ましいのですが。


主人公たる緋乃人はちょっぴり振り回され体質なものの、サブキャラ陣がしっかりと脇を固めていて、素直なお話の展開も、この面々であれば変に奇をてらうより綺麗にはまっている印象。
特に閃は、年相応の幼さ、そして雷獅子としての在り方の双方を見せてくれて、微笑ましくもあり、けなげでもあり、ラストシーンも素晴らしく。
結局その後どうなっちゃったの、という方が約一名いらっしゃるのですが、そこまでの展開を考えれば、きっと悪いことにはならなかったのでは、と思います。


全体を見ると、国ごとに災獣の性質に大きく差があることを示したお話でもありました。
少なくとも、今回悪役担当だった薙古之国は、明らかに「恵まれていない」国でした。
次の舞台は薙古之国、と明言されているため、ここをどう描くのか、はポイントになるはず。
その意味で、二巻を早く読んでみたい。