見えない敵と戦いすぎ

意味があるとかないとか考えちゃいけないんだ。
たぶん。



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「結局、僕の場合昔の本が積みっぱなしなのが悪いんだよね」


 さも大発見、みたいな顔をしている先輩だけど、そんなのはとっくの昔にわかってますから。過去の遺産が積み重なってこうなってるんですよ……


「今更すぎです、そんなの。だから前も言ったじゃないですか、しばらく新刊買うのをやめて、古いのから読んでいったらどうですって」
「それで買えない本が出てきちゃったらどうするのさ。責任取ってくれるわけ?」


 そこまで言われる筋合いもないんじゃ……まあ、気持ちはわからなくもないですけどね。出会ったときが買うべきとき、後に回してたらいつの間にか、なんてことは往々にしてあるのが現実。僕もそうやって手に入れられなかったりしたものが……


「ほら、無理だって顔してるし。やっぱり新刊はちゃんと買わないと」
「だからそれでこんなになっちゃってるんじゃないですか」


 堂々巡りだけど、どちらも完全に間違ったことを言ってるわけじゃないので、どうにもこうにも。


「僕がいったん預かっておくのも考えましたけど」
「それだと君だけ先に読んじゃいそうだからダメ」
「ですよね……」


 同じ本を買ってたって、読む順番はばらばらなんだから気にしなきゃいいのに。そりゃ、僕のところにしかないなら、必然的にこっちが先に読むことにはなるんだけど。そういうとこ細かいですよね、先輩。


「なんでこんなになっちゃったんでしょうね……」
「君の部屋もそのうちこうなるよ」
「……やめて下さい」


 うー、ほんとヤなこと言うなあ、この人。僕はそうならないように気をつけてるんです!


「だったら僕の部屋もこれ以上ひどくならないようにしてよ」
「だーかーら!」


 気がつけば、やっぱりいつもの不毛なやり取り。正直、こんなことしてるなら一冊でも読んだ方が建設的だよね、どう考えても。それでもこうなっちゃうのは……と、なんだか考えちゃいけない気がしてきた。よくない結果になるよね、きっと。うん。
 とにかく、自分の問題なんだから、先輩は先輩でなんとかすればいいんじゃないかな。


「友達だと思ってたのに……」
「無償奉仕でなんでもやってくれる友達なんて、そんなのどこにいるんですか」
「いるじゃん、ここに」


 っとにこの人は……
 どうせここで何か言ったらまたごねるんでしょ、もう。めんどくさい人だなあ!


「なんでもかんでも手伝うわけじゃないんですからね!」
「はいはい、わかってるわかってる」
「絶対わかってないでしょ先輩……」


 結局、こうしてなし崩しのぐだぐだで、あれこれ手伝ってしまういつものパターン。ああ、これを抜け出せる日は来るのかなあ……