『無音の哀戀歌 〜さようなら、わたしの最愛〜』(御永真幸)

無音の哀戀歌 〜さようなら、わたしの最愛〜 (コバルト文庫)

無音の哀戀歌 〜さようなら、わたしの最愛〜 (コバルト文庫)

表題作ともう一編、『嵐の狂想曲』が収録された二本立て。
繋がりを持った前後編になります。
舞台はパリ、革命の動乱をバックにした恋物語
個人的には前編を全力で推したい次第。
後編が面白くないとかではなく、単に前編が果てしなく好み、という点で!


もう本当、ずどん、です。
革命前夜に出会う二人。
男は死刑執行人、女は高級娼婦。
その叶うはずもない恋の結末を描いた展開がぐっときます。
全体が250ページに対し、前半は80ページと、分量的には短く、またもっと見たいと思わせてくれる内容なのですが、この短さがいい。
結末もまた……ああ、好きだなあ、これ。
あまり語ることもなく、好き、の一言。


後編は切れ味に関してちょっと落ちるかな、という印象。
前編をもっと露骨に絡めてもよかった気もしますが、ここらは好みもあるかと思います。
彼の物語はもう終わっていて、これは引き継がれ、そして先を創っていく物語になるので。
こちらは完全に革命が進行中になるため、歴史上メジャーな人物たちが放つ魅力が抜群。
断頭台や銃弾に消えゆく彼らではあるけれど、間違いなくそこに残したものはある、それを強烈に印象づけてくれます。
そして、断頭台、というものの登場による、死刑執行の持つ意味の変化もまた、もう一つの大事な旋律。
実際のところ、下手をすると恋物語——ロマンスは副菜、なのかもしれません。


重厚な仕立てでなくとも、その光・影・熱を描くことは出来るのだなあ、としみじみ。
ロマンというにはあまりに血生臭い、一つの時代における物語達。