『祈書きの巫女と銀の鱗翅』(彩木沙茄)

祈書きの巫女と銀の鱗翅 (幻狼ファンタジアノベルス)

祈書きの巫女と銀の鱗翅 (幻狼ファンタジアノベルス)

あとがき冒頭の序盤要約がなかなか秀逸だと思います。
まさにそんな感じ。
神殿で純粋培養なお嬢さんが、街中に出てきてあたふた。
善意の治癒術に対する謝礼をうっかり受け取ってしまったら、無許可営業の罪で現行犯逮捕。
巫女さんの明日はどっちだ!


とまあ、始まりはコミカルな感じですが、中盤はわりとえぐい部分もありつつ。
特に、悪役担当のリベルが語る言葉が、すべて真実とまではいかずとも、間違いなく現実の一片であり、思いの外鋭い刃として突き刺さります。
むしろ、あの場面だけ見ると彼の方が正しく見えるよね……


お話としては、もっといろいろ出来たんじゃないかなあ、という感じの世界をバックボーンに持ちつつも、メインキャラにかなり絞った展開。
その分、出会いは現行犯逮捕する側・される側だった二人の、異なる立場とその中にある共通項を通じて、きっちり向き合えるところまでが描けていたのかな、とも思います。
ただ、ここまでだとまだまだ「始まり」の二人。
この先、ここから——それが見てみたいなあ、というのが素直な気持ちです。
続き(あるとして、どう続けるのが幸せかは難しいかもしれませんが)、あってもいいんじゃないかなあ……