キャラを固める気がないよねという番外編

本日はちょっとアルコールが入っておりまして。
なのでそれを言い訳に。
あじゃぱー。



                                                                                    • -


「お邪魔してるわ」


 放課後、いつものように部室に顔を出した僕を出迎えたのは、あまり積極的に関わりたくはない御方のそんな声。思わず、間違えましたと回れ右……しようとしたところを、文字通りに首根っこをひっつかまえられた。


「ひとの顔見て逃げ出そうなんて、まったく失礼しちゃう!」
「ひとの襟首つかんで部屋に引きずり込むのはどうなんですか?」
「あら、これは緊急処置、というやつよ? 多少強引な方法も、やむをえない場合には許されるの」


 今のは違うと思うんだけどなあ……どうせ言っても聞かないんでしょうけど。


「それで、今日は何の用なんですか、会長」
「暇なの」
「……はい?」
「だから、暇だから遊びに来てあげたんだってば。感謝しなさいよ?」


 何言ってんのこの人、とはもはや言うまい。なのに誰もいないなんて信じられない、なんてじたばたしている、ちょっと(……ちょっと、ね?)エキセントリックな御方こそ、我が校が誇る名物生徒会長なのでした。外面はいいんだけどね、中身の方はもうホントね……


「なんでもいいですけど……でも、部員でもなんでもない人が、どうして誰もいない部室に入ってるんですか。鍵かかってたでしょう?」
「このあたしが合鍵の一つや二つ、持ってないわけないでしょう!」


 逆ギレですよ。うわあ。


「別に会室に詰めてる必要なんてないんだから、くつろげる場所くらい確保してたっていいじゃない」
「まあ、やることちゃんとやってるのは知ってますけどね……」


 そう、無駄に——と言ってはさすがに失礼なんだけど、そうとでも評するほかないほどに、実務においては人一倍のパフォーマンスを見せつけてくれる人なのだ、この人は。活き活きと壇上で指針を語るその姿に魅せられて、生徒会の末席に名を連ねている僕だからこそ、自信を持って断言出来る。
 すごい人、なのだ。
 ……エキセントリックなところも、全然まったく否定はしないんだけど。


「一応聞いときますけど、帰れって言っても帰らないですよね」
「答えるまでもないと思わない?」
「はいはい、そうですね」
「もう、嬉しいくせに」
「あんまり……」
「ワガママね」


 あなたほどでは、という切り返しは心の中に留めておくことにする。どうせ無駄だし。
 さておき、この人だって別にこんなどうでもいいやり取りをしにきたわけじゃないだろう。お目当てが僕、なんてのもありえないことだし、となると。


「あら、そんなの決まってるじゃない。ここにいれば——」


 思わせぶりに言葉を切る会長。
 そしてタイミングがいいのか悪いのか、ちょうど廊下からはわーわーと騒ぐ馴染みの声。ああ、やっぱり、ね。


「今日こそはちゃんと反省文、書いてもらいますからね!」
「あー、書く書く。僕じゃなくてあいつが」
「だーめーでーすー! 先輩が自分で書かなきゃ意味ないじゃないですか!」
「誰が書いたって同じだと思うけどね」
「違います! もう! 先輩のばか! 魔王!」
「お前な……」


 毎度の漫才めいたやり取りと共に部室のドアを開けて現れたのは、あまり褒められたものじゃない所行の数々で、全校的に名の知られた我が部の部長と、その後輩にして、どういうわけか彼を真っ当な人間に構成させようと、日夜(無駄な)努力を費やす風紀委員の名物マスコットお嬢さん。


「うげ」
「うぎゃ!?」


 ……で、どちらもこの会長様がわりと天敵だったりする。うん、この人が天敵じゃない、って人も二、三人しかしらないけど。


「なんでいるんだよ……あ、お前は逃げるな!」
「イヤですよ離してくださいよ私急用が!」
「やーんかわいいー! ぎゅってする!」


 目の前で繰り広げられている光景を、直接ご覧いただけないのがたいへん残念です。そう、この人後輩ちゃんが無駄に大好きなんだよね……ああ、健全な学生さんにはオススメ出来ない背徳的シーンが今まさに。


「うわーん! 先輩も変なこと言ってないで助けて下さいよう!」
「ごめん、長いものには巻かれろって言うし」
「ひどい!」


 僕も自分が一番大事なのです。ごめんなさい。


「っとにもう……で、なんで入れたわけアレを」
「入れたんじゃなくて最初っからいたんです! 合鍵持ってるとかで」
「なにそれ。鍵変えらんないのかなここ……やっといてよ」
「無理に決まってるでしょうそんなの。そもそも、先輩がびしっと言わないから入り浸るんじゃないですか」
「言って聞くわけないって知ってるでしょ?」
「そりゃそうなんですけど……って何やってんですか会長」


 あたしのことは気にしないでいいから!、と無駄に爽やかに微笑むその手には、こちらに向けられたレコーダー。ちなみに、反対の手には引き続き後輩ちゃんをがっちりキープしていたりする。これはひどい


「あとで起こして参考資料にするだけだから、続けて続けて♪」
「「なんのだよ!」」
「私もう帰りたいー!!」


 そんなわけで、今日も愛すべき我が部は騒々しい。平穏な日々はどこへいったのやら。
 やれやれ、まったく。



                                                                                    • -


もし次があっても、きっと口調とか設定とかたぶん違います。
何故ならどこにもメモったりしてないからだ!
モデルの人たちは許せ!