いろいろ試してみる

ネタのストックなんて常時ないしね!
心葉くんすげぇよなあ……
しかし設定を何も固めていないので、いったいコイツらは何の部活なのか永遠の謎である。
とりあえず、どこかのTKHNさんが書いたようなDk部とかいう魑魅魍魎の巣窟ではないと思います。
さておき、まあ方向性は別にいつもと変わってない何かを。



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「ねえ、まだ?」


 頬杖をついた先輩が、待ちくたびれた様子で言う。あのですね、僕はつい今し方ここに顔出したばっかりなんですけど?


「そっちの事情はいいんだよ。僕はさっきから待ってたんだから」
「それだけ開き直られると、いっそ清々しいですよね……」
「ん? 褒めても何も出ないよ?」
「はいはい、そうですよねそういう人ですよねアナタ」


 言うだけ無駄だってわかってるんだけど、それでも一言言ってやりたくなる。優しくしてくれなんて言わないけど——うん、言わないっていうか言いたくない——それでももうちょっとならないのかなあ。ならないんだろうけどさあ。


「そんなすぐ出来るもんじゃないし、なんか読んで待っててください」
「今日持ってきたヤツはもう全部読んじゃったんだよ」


 だから待ってたんだってば。
 そう言われたけれど、どうもいまいち喜べない。部室で二人きり、僕の書くものを読みたいと待っていてくれる先輩……なんていうと、どこかの文学少女さんが思い出されたりもするけど、残念ながら現実はそんな素敵なもんじゃない。そもそも『少女』じゃないしなあ。いや、先輩が女の子とか、それはそれで困るんだけど。なんか。


「む、なにさ。そんなしかめっ面して」
「いいえ、なんでも。ちょっとろくでもないこと考えちゃっただけです」
「ふうん。まあ別にいいけどさ」


 変に突っ込まれても面倒なので、あっさり引いてくれた先輩にほんの少しだけ感謝しつつ、さて、といつものようにまっさらな原稿用紙と向かい合う。
 お題も制限も何もなし、ちゃんと最後まで書いてくれたら、あとは好きなようにしていいから——それが先輩から示されたたった一つの条件。どう考えたって読む方が本職の自分が、四苦八苦しつつこんなことしてるのは、本当にどうしてなんだか。


「でも先輩も物好きですよね。僕が書いたのなんて読まなくても、いくらでも読むものあるじゃないですか」


 今日は何を書こうか、ぱっとは出てこないのを誤魔化そうと、そんなことを言ってみた。実際、ずっと思ってることでもあるんだけど……


「え? そんなの決まってるじゃん」


 だけど、先輩は笑いながらしれっと言う。


「好きだもん、君の書く話」
「……そう、ですか」
「そうなの。なんて言うのかな、その雰囲気っていうか空気っていうか……まあとにかく、細かいことは気にしなくていいから、書いちゃってよ」


 大丈夫、つまんなかったらちゃんとそう言うからさ、なんて。
 ああ本当、この人にとっては面白いお話でさえあればなんだっていいんだろうなあ。物語に貴賤無し、そんな言葉が思い浮かぶ。それはもちろん、書く方にとってはとても怖いことでもあるんだけど。
 それでも、読んでくれる人が、待ってくれている人がいるのは——それが、たとえこのちょっと風変わりな先輩でも——きっと幸せなことのはず。だったら、せいぜい喜んでもらえるようにやらないと、ね。うん。
 さて、それじゃ。
 今日も、物語を始めよう——