あーたーらしーいあーさがきた

DkのタイバニはBSで見る方の当方ですが、昨日のは確かにすごかった。
そりゃあ先週のユーストの時点で死屍累々ってやつですよ。
バニーちゃんもブルーローズさんもあらあらまあまあ。
いいなあ、タイガーさん。


それとはまったく関係なく。
いつもの俺はもうダメだをお送りします。
朝から僕はとてもダメです。



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 昼休み、昼食を可能な限りさっさと片付けて、いつものように読書スポットである部室に向かうと、


「……ええと、どうしました? 先輩」


 この世の終わりみたいな顔をした先輩がいた。死んだ魚のような目に、どんよりした空気。まさに世は世紀末(ただしヒャッハーではなくダウン系)な感じである。


「……れた」
「はい?」
「忘れたんだ」
「だから! 昨日買った新刊を! 家に!」


 忘れたんだ、と消え入りそうな語尾に、はふう、という溜息。
 ははあ、なるほど。口を開けば無駄に的確な表現で相手の傷口をえぐる、コンクリートロードばりにやなヤツとして名高い先輩が、妙にしょんぼりしてるのはそういうわけですか。……ちょっとだけ、いい気味だと思っても悪くないよね?


「読む本ならいくらでもあるじゃないですか、そこら中に」


 そう、部室といいながらそれは名ばかり、実質この部屋は、僕と先輩の家からあふれてきた蔵書置き場と言っても過言ではないのである。スチールラックにはぎゅうぎゅうと本が押し込まれ、無造作に積まれた段ボールの中身も言わずもがな。床積みだけは僕のたってのお願いでやめてもらっているけれど、最近ではいったいどこに何があるやらさっぱりわからない。巷では魔窟と呼ばれているとかいないとか。いや、巷っていうかそんなこと言うのウチの部員だけなんだけど。


「僕はあれが読みたかったんだ……」


 おや、これはどうも重症らしい。でも気持ちも分かるかなあ、それは長らく作品の出ていなかった作家の新作で、第一報が出たときから僕らはきゃいきゃいと色めき立ったものである。ははは、ざまあみ……っと、コホン。


「そんなに読みたいなら、もう一冊買ってきたらどうですか?」


 幸か不幸か、我が校の徒歩五分圏内には有名大型書店が存在する。いつもお世話になっております、というやつだ。ホント、いいお客様だと思います、僕と先輩。
 がしかし。


「僕が財布を持ってきてるとでも?」


 あーはいはい、また忘れたんですかそうですか。というかどうしてそこで無駄に偉そうなのかな。そういうところが先輩なんだけどさ、でもなー、それじゃなー。


「ついうっかり、今朝来るときに読み終わっちゃった本がここにあるような気がするんだけど、気のせいだったかなー」
「なん、だと……」


 がたん、と勢いよく立ち上がる先輩……って、ダメですよここでそんなことしちゃ! ああほら、また棚からばさばさ。落ちても危なくないように、極力上の方は薄い本で固めてるんだけど、ちょっとは注意してほしい。無駄なうっかり属性とかいらないんですよ。


「今貸せすぐ貸せさあ! さあさあ!」
「うわ、ちょっと近いですよ! 離れて!」


 くっ、せいぜいからかってあげようと思ってたのに、これはマジだ。本気で目が怖いですよ先輩。死んだ魚が飢えたピラニアにクラスチェンジしてますよ!?


「ああもう分かりましたよ、だからまとわりつかないでくださいってば!」


 仕方ない、残念だけどここは、と諦めて鞄からその本を取り出そうとしたとき。
 ——ぱしゃり。
 突然、そんな音が響いた。カメラの、シャッター音。


「あ、いいからいいから、気にしないでね」
「コモリさん、何やってるの!?」


 そう、そこにいたのは、我が部が全校に誇るアイドル(マスコットでも可。端的に言えばかわいいは正義)、コモリちゃんことコモリさん。その手には、こちらにレンズを向けた携帯。ぱしゃりぱしゃりと無慈悲な音が連続で鳴り響く。


「いやそのこれはね?」
「違うんだよコモリさん!」


 鳩が豆鉄砲を食ったような僕らの様子にも、うんうん分かってるよ、と完全に語尾に音符がついてる口調のコモリさんだけど、それって絶対分かってないよね? そうだよね?


「そっうしーん、と」
「え? あ、ちょっ、ダメ! メーリングリストはダメ!」


 そんなところに送ったら、アイツやらソイツやらが食いついてくることは目に見えて……ってはや、もう反応あるし、なんかメールがんがん来てるし!


「仲良しっていいことだよね、先輩♪」
「「全然よくないし!」」


 声を揃えて叫んでみるけれど、まったくもって残念ながら、それを聞いてくれる相手などいないのでした。鳴り止まない着信音の二重奏(なんで被ってるんですか先輩やめてください)と、コモリさんの鼻歌が、なんだかとってもああ無情。
 やっぱり、先輩なんて大嫌いだ!