昨日の残骸

何かをやろうとして失敗した残りかす。
今一つしっくり来てない。

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「……ついこの間片付けにきたばっかりですよね、先輩」
 半分以上諦めの入った台詞に返ってくるのは、おやそうだったかな、という気の抜けた返事。声の主は天井近くまでうずたかく積み上がった本の山に埋もれてちっとも見えない。
「ちょっと目を離すとすぐこれなんですから……」
「そう言うもんじゃないよ、君。世の中にはエントロピーというものがあってだね」
「その話はもう聞き飽きました」
 ばっさり切り捨てると、なんだとぅ、なんて抗議の声も聞こえた気がしたけれど、そんなことに構ってなんていられない。むしろ、ダメだこいつ早く何とかしないと、というやつである。足の踏み場もない——文字通り、なのである。この状況でどうやって生活しているんだか——中を、どうにかこうにかつま先立ちで部屋の奥へと進む。ついでに目についたシリーズものをまとめておく作業も忘れない。
「やあ、悪いねぇいつもいつも」
「本当にそう思うんなら、ちょっとは自分で何とかしてくださいよ、と」
 ちっとも感謝の念が感じられないその言葉にも、いつのまにか慣れてしまった。ええそうですよ、いいんですよ。好きでやってるんですから? ……うわ、出たばっかりの新刊がもうこんなところに埋もれてる。ひとがまだ買えてさえいない本を……おのれ。
「こっちとしては、別に困ってるわけでもないんだけどね」
 ふあぁ、なんて欠伸混じりの声にいらだってはいけない。平常心、平常心。
「先輩が困らなくても周りの人が困るんです」
「へぇ。たとえば?」
「たとえばって……そうだ、ほら、お気に入りのコモリちゃん。こんな部屋じゃ遊びに来てくれませんよ」
「……フン。それは困るな、人生にとって大いなる損失だ」
「そこまで言いますか。とにかく、だったら」
「だが残念だったな! コモリちゃんならつい昨日遊びに来てくれたばかりだ!」
 どうだうらやましいか、と言われたところでリアクションに困る。
「あーそうですねーうらやましいですねー」
「ふふ、妬くな妬くな、君の気持ちは十分わかっているさ」
「だったら少しは言うこと聞けよ!」
 ああ、さようなら平常心。
 結局いつものように叫ぶ羽目になった僕の目の前で、本の山に埋もれるようにして無駄に偉そうに笑うのが、我らが(たぶん)偉大なる先輩、ちいさな巨人でるたさんである。
 うわむかつく。いつもながら。




「で先輩、今日は何で部屋の中なのに帽子を被ってるんです?」
「ふむ、脱ぐのを忘れておったな」
 取っていいぞ、とちょこんと頭を差し出すその姿は、まあ、見ようによっては、ちょっとだけかわい……
「ほれほれ、はやく」
 ……くなんてないんだ。
 うん、そう。全然これっぽっちも。まったく。

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イメージ映像はアイコン画像でどうかひとつ。
この辺の配役発展系が、態度のでかいD姫とそのお付きKさん、及びパシリk、になるようなならないような。
キャスティングは、まあその手のテンプレに従えばいろいろと遊べはするのですが。
もはや原型がどこに行ったんだかよく分からない何かである。
基本僕はあまり凝った切り口は合わないので、シンプルイズベストなのだよなあ……