『恋のドレスと陽のあたる階段 ヴィクトリアン・ローズ・テーラー』(青木祐子)

大きな山を越えて、もはや二人の間を遮るものは何もない……とは行かないのですが、これまでとは違う空気がそこに流れているのも、やはり確かな話。
まだまだどこか硬い表情ながら、表紙の帯下なんかも、ね。


シャーリーがんばるの巻。
表ボス(裏ボスは引き続きあの人です……と言っていいかどうか?)のお父様相手に、もう引く気も譲る気も、駆け引きさえ抜きでのやりとりは、真っ直ぐすぎるきらいのある彼らしいそれ。
パメラじゃないですが、やはり彼しかいないんでしょうね。
王子様ともヒーローとも違うけれど、オンリーワンの存在として。


一方で、お母様や妹様にはぎったんぎったんにされている辺りは、まあなんとも。
この踏み込みっぷりは家族だなあと思いつつも、我らがアントニーのように、それでなくとも直截な物言いをしてくれる相手がいる、というのは、あれはあれでシャーリーも周囲から愛されている、んでしょう。きっと。
アントニーくんのあれはまた違うという話もありますが。
シャーリー相手じゃなかったら、わりと即座に暇を言い渡されるレベルですが、彼はやっぱりそのままで居て欲しいです。
アントニーアントニーだからな!
新キャラ(でもない)執事にお株を奪われそうだけどがんばって!


そしてクリス。
少しずつ何かが変わり始めているのは間違いなくて、でもそれは一体どういう変化なのか。
強くなった気もするし、弱くなった気もする。
でも確かに、彼女はもう「選んでいる」ように見えます。
拒絶でも迎合でもない道を歩き出した彼女が、近いうちに訪れるであろう「ドレスをまとった時」、どんな表情を見せてくれるのか。


物語としては、当然ながら段々と二人に収束していくわけですが、そんな中でパメラの話も、とあとがきにあったのは嬉しいところ。
ポジション的にも、キャラクタ的にも、この物語の中では一番好きなんですよね、彼女。
イアン先生とどうこうしてほしい、ではなく、フェードアウトとは違う、彼女の選択とその先に続く道を見届けたい、と。


余談。
恒例あとがき1ページイラストは、どうして毎回こう素晴らしいのでしょう!