『人形草紙 桜下の誓いと散華の絆』(紫月恵里)
- 作者: 紫月恵理,高星麻子
- 出版社/メーカー: 一迅社
- 発売日: 2011/03/19
- メディア: 文庫
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彼らのみが抗しうる、人の邪念から生まれ出た「鬼」の存在する世界の物語。
帯には「和風ラブファンタジー」とありますが、むしろラブより和風ファンタジーがメイン。
主役の二人だけでなく、脇を固める面々にもそれぞれエピソードがあって、わりとがっつりしっかり。
いいなあこれ、と素直に。
いやこれ入選作なの?受賞作じゃないの?、というのが正直なところ。
そんなに重要なお役目なのに、わりと市井の暮らしだよねとか、「真相」に至るまでにもう一つ二つエピソードを、なんてちょっとした不満はあれど、デビュー作補正を抜きにしてそこまで気になるレベルではなく。
これは先が(シリーズとてあるとしても、完全新作としても)楽しみだぞ、と。
七宝の面々がイケメンなのはある意味お約束としても、主人公がキャッキャウフフするだけのお話、ではありません。
七宝士にまつわる設定はなかなかえぐいものだし、そこをただ陰惨に描くのではなく、うまく織り込んだ展開はなかなか。
ここは「え?そっちなの?」的な印象も人によってはあるかと思いますが、終盤の展開ありきならこうなるだろうなあ、という感じで。
エピソード的には、脇役及び主人公を見守る年輩サイドが好き、なので檀さん組押しで。
黒金白銀もほぼワンシーンのみの出番ですが、あそこがよい。好き。
主の命に従うだけの人形ではなく、人の意を汲み意志持つその姿。
もちろんそれは、それぞれの七宝たちの姿でもあります。
ここを、というシーンがどうにも切り出しにくいのですが、とにかく全員に見せ場ありです。
七宝・七宝士の面々は当然として、脇役だと思っていたあの人まで。
デビュー作でこれなんだから、まだ出てきていないペアもいるので、その辺り込みで続編が出てくれないかと期待。
……あ、約一名見せ場ない人が……でもあれはフォローもしようがないしなあ。
よしんば続編があって、悪役的に登場してくれたらもう惚れるしかない。
けど無理か、さすがに……