『花咲けるエリアルフォース』(杉井光)

花咲けるエリアルフォース (ガガガ文庫)

花咲けるエリアルフォース (ガガガ文庫)

身も蓋もまったくないことを承知であえて書けば。
ああ、杉井光だなあ、という杉井光作品でした。
むしろそれを期待して読んでいるわけで、その意味で開始一行で恋に落ちるより他になく。
その「いかにも」なタッチが、だからこそ心地良い。
それだけで終わらせてしまってもいいのかな、と本気で思う程度には、そういうお話です。
テーマがあって、少年少女がいて、面白うてやがて哀しき、という。


ただ。
世界中の誰より孤独といってもいい場所で、けれど世界中の誰より他人と繋がっている、その皮肉と矛盾は、血塗られているからこそ美しく。
ゆく場所とかえるべき場所、そしてそれを失うかもしれない恐怖。
僕らの物語、だよなあ、そう思います。


それは限られた世代にしか届かない、そんなものかもしれないけれど、だからといって価値がないなんてことにはならない。
受け取る誰かがいるのなら、そこに何かが存在した証は確かに残る。
たとえ岩に穿たれた刻印だけだとしても。


この手の物語の宿命として、どこに着地するのか、はやはり気になります。
桜は当然のように散るものとして、そのとき神楽はどうなるのか、とか。
「最後の閃光」として眩く輝いて燃え尽きるのか、あるいは更にその先へと進む何かを見せてくれるのか。
どこか懐かしい気さえする物語、行き着く先が見られる日を待ちながら。