『花咲けるエリアルフォース』(杉井光)
- 作者: 杉井光,るろお
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2011/02/18
- メディア: 文庫
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ああ、杉井光だなあ、という杉井光作品でした。
むしろそれを期待して読んでいるわけで、その意味で開始一行で恋に落ちるより他になく。
その「いかにも」なタッチが、だからこそ心地良い。
それだけで終わらせてしまってもいいのかな、と本気で思う程度には、そういうお話です。
テーマがあって、少年少女がいて、面白うてやがて哀しき、という。
ただ。
世界中の誰より孤独といってもいい場所で、けれど世界中の誰より他人と繋がっている、その皮肉と矛盾は、血塗られているからこそ美しく。
ゆく場所とかえるべき場所、そしてそれを失うかもしれない恐怖。
僕らの物語、だよなあ、そう思います。
それは限られた世代にしか届かない、そんなものかもしれないけれど、だからといって価値がないなんてことにはならない。
受け取る誰かがいるのなら、そこに何かが存在した証は確かに残る。
たとえ岩に穿たれた刻印だけだとしても。
この手の物語の宿命として、どこに着地するのか、はやはり気になります。
桜は当然のように散るものとして、そのとき神楽はどうなるのか、とか。
「最後の閃光」として眩く輝いて燃え尽きるのか、あるいは更にその先へと進む何かを見せてくれるのか。
どこか懐かしい気さえする物語、行き着く先が見られる日を待ちながら。