『神さまのいない日曜日 IV』(入江君人)

神さまのいない日曜日IV      (富士見ファンタジア文庫)

神さまのいない日曜日IV     (富士見ファンタジア文庫)

今回も潔く、前回ラストシーンからの続き、かつくどくどと説明はなし。
一瞬、今どういう状況だっけ……と考えてはしまいますが、そこを乗り越えられれば一気に戻ってこられるのは前回通り。
さて。
さて、今回は。
——世界を救う、ということについて、あらためて。
手を変え品を変え、毎度いろいろな切り口で語られる、アイの壮大な夢。
人々が、己が手と狂おしい想いの果てに作り上げた「天国」——此度の舞台でもそれは変わらず。
見果てぬ夢を信じ、そして疑う。
たとえ否定されてもぶれることなく、誰かの想いは誰かの想いとして受け止めた上で、それをも含めて救ってみせると口にする。
本当に、彼女は変わらない。


終盤、ひたすら塔を上り続けるシーンは、読者であるこちらも急き立てられるようにページをめくらされます。
願いを叶えて「しまう」自動装置。
救われたい、というのは誰もが持つ願いで、それはアイとて例外ではなく。
けれど、そうやって叶えた願いの両親さえ「甘くない」、本物の存在として呼び出してしまうのは、彼女の強さか、それとも彼女を信じる両親の強さか。
再会した傷持ちに「逃げるな」と告げる姿には、その双方を感じます。
そんなこんなで盛り上がったクライマックスのあとで、ちょっぴり笑わせてくれるのはご愛敬。
この緩急もまた、シリーズの魅力の一つ。
というか、がんばってんじゃん、アリス。
格好良いじゃない。ねえ?


死者が闊歩し、墓守が産まれ続け、終わりに向かう世界。
だとしても、生者/死者/墓守の区別なく、そこに誰かが存在し続ける限り、それは続いていく。
狂っている——そう口にする資格が、いったい誰にあるのか。
そしてこんな世界だからこそ、夢見た先に希望があって、それで悪いわけがない。
旅はまだ、続きます。
終わりがくるかどうかは分からないとしても。