『デュラララ!! 9』(成田良悟)

デュラララ!!×9 (電撃文庫)

デュラララ!!×9 (電撃文庫)

ある意味で番外、という気もする、そんな臨也編。
ろくでなしは如何にしてろくでなしになりしか、ではなく、ろくではなしは昔からろくでなしでした、という。
ここのところ、黒幕家業から表舞台に引きずり出されたような場面も多く、どうしちゃったの、と思っていたら、まあいつも通りでした。
明らかにミスリードを誘う「暗い場所で」パートの、さらにもう一段階上で相手をあざ笑うやり方は、まさしく彼の独壇場。
つくづく、ろくな死に方はしないだろうけれど、のうのうと最後まで生き残るタイプです。
新羅とのあの奇妙な関係は、果たしてなんと呼ぶべきなのか。
やはり、いろいろな意味での敬意を表して「友情」としておきましょうか。
字面通りではまったくないし、殺伐としているけれど実は、ですらありませんが。


そして。
今回の本題ではない、けれどこの物語の一つの根幹をなす出来事も。
即ち、彼の帰還。
まだ、池袋の闇が決定的に動き出す前、ダラーズという存在を、新しいコミュニティの在り方だと無邪気に信じられていた頃、そこには彼と彼女と彼の物語がありました。
竜ヶ峰帝人
園原杏里。
紀田正臣。
あの三人の、すれ違うしかなかったエピソードが、とても好きでした。
だから待っていたのです。
再び彼らが集うことを、その表も裏もさらけ出し、一つ舞台で顔を合わせることを。
鍵はやはり正臣が握っていると思っています。
失ってしまったものを、今度は過たず取り戻せるか。
次なる舞台で、彼らがどう動くのか——それを見届けたいと思います。