『神様のメモ帳 6』(杉井光)

神様のメモ帳〈6〉 (電撃文庫)

神様のメモ帳〈6〉 (電撃文庫)

おかしくて、哀しくて。
ありえないようなことだってありえてしまうそれは、やはり「現代の」ファンタジー
といっても、やはりまず目に飛び込んでくるのは我らがニート探偵・アリス。
まあ、もうここのところずっとそうですがいちいちいじらしいというか鳴海はお前もうダメだ!爆発しろ!
……。
それぐらい今回は端々での破壊力が増強されておりました。
『必ず喜ばれる親愛表現25例』とか、もう。
転げ回る(のち、暴力行使な)アリスの姿が目に浮かぶようです。


さて、今回の事件。
冒頭で鳴海が語るように、姿を現さない彼こそが、主人公。
どこでどう、ではなく、漠然と感じていた不安の正体に気がついたときは、やはり手が止まりました。
それに触れず、すべてに幕が下ろされればどんなにいいことかと祈りました。
——が、この物語には探偵がいます。
真実をつまびらかにし、綺麗に並べて揃えてみせる、喪服をその身にまとった彼女が。
どうして、というのは、今まで幾度となくアリス自身が語ってきたことであり、それこそが彼女を彼女たらしめる規範でもあります。
それでも、蓋をしてしまい込むのではなく、向き合ってその胸に抱いたまま、ひとは歩き出さないといけない。
失われてしまったものは、けれど形を変えて受け継がれていく。
エピローグの、そのラスト、静かに輝いている「何か」は確かにそこにあります。


で、そのあとにジゴロ先生です。
落差が!落差が!
いや、こっちもこっちで、人をくったようなテイストと、それでいていい話に丸め込まれたようなラストは、嫌いじゃないと言うよりむしろ好きな部類なのですが。
そして鳴海はこの調子でいったいどこに向かってしまうのか。