『アクセル・ワールド 7 災禍の鎧』(川原礫)

アクセル・ワールド〈7〉災禍の鎧 (電撃文庫)

アクセル・ワールド〈7〉災禍の鎧 (電撃文庫)

なかなか強力な引きで終わった前回からの続き。
ひとつ、この加速世界の深奥にも触れる回想から幕を開けたわけですが……
また続きかい!、という読者の大半が思ったであろう言葉を先に。
んもー、しかもまたここで!ここで!、な引き。
ただ、ここからの展開は、単にあの二人の再度の決着だけではなく、長く続いてきた悪夢の連鎖を断ち切ることへの一歩でもあり、じっくりと見定めたいのも確かな話。
正座して8巻を待つのみです。


さて、ラストを先に持ってきてしまいましたが。
まずは冒頭の「回想」。
うん?、という違和感はすぐに解消されることになりますが、逆にだからこそ生じる不安。
案の定というか、お約束のように悲劇の幕開けが描かれます。
悪夢の始まり。
彼と彼女にとって、その世界とはなんだったのか。
実年齢からすれば、あまりに長すぎる時間を過ごした加速世界。
ゲームはリアルの対比ではなく、並び立つものとして存在する——このシリーズの当初からの命題が再び浮かび上がる場面でもあります。
余談ながら、それこそが「これまで」の電脳世界を舞台とした物語と、『アクセル・ワールド』との違いでもあると思っています。


さらに「現在」の帝城でも新たな謎を提示しつつ、先輩がヒロインですよと自己主張したり、相変わらずパドさんの無敵っぷりを見せたりしながら、終盤へ。
……ああ、もう、君はどうしていつもそうなんだろう、という。
コンプレックス、の一言で片付けてしまうには、あまりにも、あまりにも苦くて苦しい想い。
あの世界で、戦場でもう一つの時間を重ねている彼らは、だけどまだ現実には中学生で。
迷って、悩んで、どうしようもなくて。
選んだ道は正しくて間違っていて。
またなのかと、そう思うと同時に、だからこそ彼が本当の意味でそれを打ち破る姿が見たい。
出来損ないで中途半端で、ならば君は、どうすれば自分を認められるのか。


災禍の鎧、という大きな悪夢。
それに比べると「小さな悪夢」であるタクムの迷い。
けれど、当事者たる彼らからすれば、それは大小の違いなく、繰り返される負のスパイラル。
「運命」がその道を切り開かんことを。