『アンチリテラルの数秘術師』(兎月山羊)

数式をベースにした……といっても、こてこてではなく設定としては控えめ、むしろその辺りの「理屈」よりも「意志」こそをメインに据えた、異能モノ。
逆転劇、というのはやはりいいものです。
この「設定」に関しては、もっとマニアックなネタを使って、いけるとこまでいっちゃえ、なんて少々の物足りなさも。
蘊蓄で埋め尽くされても、あるいは説明なしにガツンといっても、はまる人ははまる……んじゃないかと思うんですが、まあ、誰得ですよね……
とはいえ、切り口としていろいろ出来る(それこそ「いかにも」な能力を、もっともらしく説明する等々)のは間違いないところ、その辺悪役のはっちゃけ方に期待。


お話としては、やはり確率0%からの逆転劇。
目新しいわけではなく、ある意味お約束ではあるのですが、この手のお話ではやはりこれがないと。
能力モノは有利不利の食い合わせと逆転劇につきます……と言ったら言い過ぎですが。


そしてもう一つ、雪名・誠一・秋月さんの関係性。
それぞれが、知り得ないところ(秋月さんだけは、誠一の出自までは知っているとして、けれど親父さんの最後までは知らないはず)で繋がっている。
この先改めてどうこう、と発展する関係性ではないとしても、こういう絆がベースにある、というのはじんわりとくるものがあります。


異能バトルは異能バトルとして、何より大事なお話の中に生きてる人物たちがいる、それがすとんと納得出来る、そんな気が何故かしました。