『4 Girls』(柴村仁)

4 Girls (メディアワークス文庫)

4 Girls (メディアワークス文庫)

四編からなる短編集。
どれも決定的に何かが始まる、その一歩手前まで。
けれど、そのほんのちょっぴりの物足りなさが、なんとも言えず心地良く。
始まらなかった恋だったり、今日とは違いそうな明日だったり、始まりそうな恋だったり、気づかずに立ち止まっていた足を踏み出したり。
そんな、「もう少し見たいこの先」を目の前にして、思い切って幕を下ろした構成が見事。
だって、どれも幕の向こう側が見える。
人それぞれ、その先に思い描く光景は違うだろうけれど、それを想い描かずにはいられない気持ちにさせてくれた時点で、文句なんてあるはずもなく。


どれも、特別ここがすごい!、というお話ではありません。
ただ、間違いなくどれもこれも愛おしい。
幸せになれて、抱きしめたくなる、そんな四編。
変わり映えのしない日々も、ちょっとした何かで色合いを変えるかもしれない、明日何かいいことがあるかもしれない、そういう気持ちになれます。
実際何もなくたって、それはそれでいいじゃない、騙されたとしても、読後のほんのりとした幸せな感じは、嘘じゃない。