『花守の竜の叙情詩』(淡路帆希)

花守の竜の叙情詩3 (富士見ファンタジア文庫)

花守の竜の叙情詩3 (富士見ファンタジア文庫)

おかえりなさい、と。
まずはそう言いたい、待望の第三巻にして完結編。
ほぼ一年ぶり、出ないのではないか、そう思ったこともありましたが、無事に綺麗な終幕を迎えることとなりました。
二巻がああいう終わり方だった以上、どうなるかといった三巻でしたが、この物語らしい、「想いの強さ」を最後まで貫いた展開でした。
テオとアマポーラの思い合うが故のすれ違い、ロゼリーとキャンディッドの一途であるが故の袋小路、そしてエレンのどこまでも真っ直ぐなそれ。
正しいことも間違っていることもある、ただそのどちらにしても、人を突き動かす無形の力。
特に今回は、ロゼリーとキャンディッド側の視点もあったのが嬉しかったところ。
歪んだ想いは他人を傷つけるものだとしても、その起点を思えば、ただ断罪されるだけではあまりに救われない二人なので……
キャンディッドとあのひとの結末は、いささか理不尽な面もありましたが、そもそもあの手の存在はそういうものだし、今までも放任主義だった以上、ああいうものかなあ、と。
閉じた関係性の是非はさておき、欠けたものを求める、というのはどんな存在でも変わらない……とはいささか甘いですが、きっとこの話はそういう話です。
厳しく、甘い。
主役二人は、あまり言うこともないでしょう、読めば分かる。
強いて言うなら、やはりこの一言で。
——おかえりなさい。