『金星特急 3』(嬉野君)

金星特急 3 (ウィングス文庫)

金星特急 3 (ウィングス文庫)

読むたびに『SEVEN-BRIDGE』(ライアーソフト)がまたやりたくなる(自分内自分調べ)、そんなシリーズも三冊目。
舞台はまたも変わり、此度は大平原。
この移り変わりがあってこそ、列車を舞台に選んだ意味があるもの。
特に、この列車は大陸横断、なんてレベルを超越したところに存在しているので、ちょっと普通とは違う楽しみ方もある……かもしれません。
感触としては、大作というよりさっと綺麗に幕を下ろすタイプの作品、という気もしていますが。
さて、そんなステップで砂鉄の出自をメインに据えた話だったわけですが。
ちょっと驚きました、なんとなくこの辺はもうちょい引っ張るかと思っていたので……
同じく、ユースタスについても。
惜しげもなく開示されるそれぞれの過去に、勿体ないとさえ感じてしまいます。
その分、ぐいぐい引き寄せられるし、これでまだすべてが明かされたわけではない、というのが分かる辺りも心憎いところ。
殿下は意外に食えないし、金星特急とは違う場所でも大きな動きがあったり、盛り上がるは面白いは大変素敵なのですが、極めつきはこのラスト。
錆丸の謎を強烈にアピールしつつ、その意志と決断をはっきりと見せることで、単なるお荷物的主人公ではないことをあらためて。
次、どうするのこれ!、と言いたくなるところでの幕引きは、なにやらそのまま本誌を読むとちょうどいいらしいのですが……それは罠だ、絶対に罠だ。


余談も余談。
SEVEN-BRIDGE』は中盤以降がナニでソレでなければ、本当に素晴らしいゲームでした。
序盤だけで十二分にお釣りがくるとも言えるのですが。


——越えてゆけ 越えてゆけ
    黒の切符を手にしたものは 黒い列車に乗ってゆけ


       七つの橋のその向こう 旅の終わりのその先に、
                  みはてぬのぞみがあらわれる


だからねー、型月のめてお作品は音沙汰ないけど絶賛大期待中なのです。
パリを夢見る新宿、なんて、そのフレーズだけでもう。
……実際出るかは神のみぞ知る。