『イスカリオテ VI』(三田誠)

イスカリオテ(6) (電撃文庫)

イスカリオテ(6) (電撃文庫)

クライマックス、です。
絶望的な状況とそこからの反攻、というある種分かりやすいくらいに分かりやすい筋立ては、しかしそれ故に圧倒的な熱量を帯びていて。
身も蓋もなく端的に言ってしまうならば——ああ、面白いなあ、と。
のっけからテンション高いところをガツンと行っておいて、続いて恋する乙女なのが私です、なノウェムさん。
ヒロインの面目躍如、自覚してなくても可愛いけど自覚したらもっと可愛い。
でも一番好きなのは大淫婦さんなのでごめんなさい、とかなんとか。
最初っからあの人が一番ストライクゾーンだったんですよね……たぶん、どうあっても報われず、しかしそれを嘆くことなく最後まで凛と毅然としているに違いない、という勝手な思い込みで。
いや、でもあの人も今回ちゃんとヒロインしてたし、お嬢様も含めて三者三様、それぞれに見せ場はあったと思いますがどうでしょう。
そして「イザヤ」。
その正体こそ予想の範疇を大きく外れるものではなかったにせよ、本物もまた偽物であった、というのは、なんともこの物語らしい構図。
なにせ、誰も見たことがないはずの「奇跡」さえ、この世界では模倣することが出来るのだから。
そして同時に、だからこそ真贋の差を分けるものなどありはせず、ただそうあるべし/そうありたいと願う意志こそが、ただそこに在るものなのだなあ、などと。
その意味で、蒼馬もまた、生ける屍などではなく、真物のような気がします。


ここまで盛り上げたクライマックス。
最後の一文と、その後に記された「続く」の二文字。
その向こう側、まだ見ぬ物語が待っていることに喜びを感じつつ、今しばらくの幕間を。