『円環少女 11 新世界の門』(長谷敏司)

おはなしがどこまでも絶望へと転げ落ちていくから、他愛もない日常シーンや、ケイツとの馬鹿げたやりとりが、どうしようもないほどに愛しく思える。
鬼火衆にメイゼルだけでもお釣りがきているのに、めっきりコロッケ聖人と化したエレオノール、三人称が全裸でももはや違和感の欠片もないセラが加わると、もうそれはどうしようもないほどに馬鹿馬鹿しくて、笑うしかない。
それでも、そのすべてが欺瞞だとでもいうように、魔法ではなくとも決定的な兵器である核と、ただ一人の再演大系の使い手であるきずなを巡って、世界は疾走を止めない。
開始当初からずーっと絶望的だった物語ではありますが、今回はまたちょっと違う方向で絶望的。
ただ単に敵が強大だというだけではなく、情勢のほぼ全てが敵に回ったといったも過言ではない状況。
そう、まさしくあとがきの通り。
がんばれ自営業!
そして、こちらも一巻からの引きである「再演大系」――これが、遂に歴史の表舞台に。
もう、すべてにおいて最高のえげつなさ、これをただの少女たるきずなが背負うのかと思うと、今更ながら……
ヘタレ期待の星・ケイツさんは、相変わらずの後ろ向き全開なだめっぷり言動を見せつけてくれましたが、あの設定がこういうふうに使われる日が来るとはなあ、と妙に感心してしまいました。
あれは、単に仁の内面を自身に強烈に見せつけるためのものだけだと思っていたので。
腐っても神に一番近かった男の相似形。そう、たとえゴキブリでも。
最後はまた、前回のアトランチスとは違った方向にとんでもない引きで終了。
審判を越えてなお、救済は遙か遠く。
神の居ない世界に舞い降りたそれは、果たして。