『月見月理解の探偵殺人』（明月千里）

月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)

唐突に現れた傍若無人な「探偵」と、現実を舞台にした《探偵殺人ゲーム》。
という設定だけ見てしまうと、なんとも現実味がないと見えるかもしれませんが、むしろそれがポイント。
このありえなさを最後まで脇目もふらずに貫き通したとき、「ゲーム」は「ゲーム」として成立するのです。

毒を吐き続ける探偵が明らかにする、人間の表と裏。
善悪ではなく、彼女自身の「正義」とでも呼ぶべきその在り方に引きずり回されているうちに訪れるラストは、当然のようにどんでんありの解決。
劇中の毒がもっとあってもよかったかなあ、とか、ラストがそれなりに綺麗に収まっちゃったかなあ、というのはあるにしても、これは面白かった。
同時進行するゲームももう少し本編とリンクさせられればさらに言うこと無しでしたが、このジャンルでこういう仕立てをやってくれるのは嬉しい。