『鍵開けキリエと封緘師 小箱は開くのを待っている』(池田朝佳)

ファンタジーと鍵、といえば『魔法鍵師カルナの冒険』(月見草平)が思い浮かぶわけですが、あちらがわりと明るめ、かつ外に広がっていくような物語だったのに対し、こちらは静かでこぢんまりとした雰囲気。
むかしながらのファンタジーめいた空気です。


まず、主人公たるキリエが「普通に」鍵を開けます。
そこに魔法はありません、いわゆる普通の錠前破りです。
ファンタジーであるからして、魔法の錠前も出てきますが、やっぱり普通に開けます。
これはこれで、ある種の斬新なアプローチのような気がします。


でも、ただひたすらに「鍵を開けると」に憑かれている彼には、この純粋さがすごく似合うのです。
そんな彼を象徴するように、あまり世界について語られることはなく、ストーリーの軸になるいくつかのエピソードが顔を出すだけ。
けれど、それは彼がこれからひとつ【封印の小箱】を開けるごとに、少しずつ描かれていくような気がします。
そうやってストーリーが進んでいくとすれば、この物語はまた違う顔を見せてくれる予感があります。
そういう意味で、わりと、結構、とても、期待。