『全滅なう』(十文字青)

全滅なう (一迅社文庫)

全滅なう (一迅社文庫)

まずはじめに。
お前が田中か!
……意味が分からない人は気にしないでください。


さて。
いや、これはちょっと驚いたというか。
十文字青、という人の書くものは、おおむねいつだって、形は違えど恋や愛を歌い上げるそれだと思っているのですが、今回はこれがまた。
これまでにないくらい、どこまでもきっぱりとまっすぐに、こいのうた。


分かりやすいからどうだこうだ、と言いたいわけではなく、こうまでストレートに、切実にくるとはなあ。
例によって、裏にはまたえげつない設定やら何やらがうごめいていますが、それはそれ、これはこれ、とでも言うように、必殺の弾丸めいた、真っ直ぐな一撃。
やられた、としばらく呆然とするレベル。
……この辺は、既存作品読了前提、だとも思いますけれど。


ともあれ、変なヤツらはやっぱり出てたり、のほほんとしつつも殺伐としたタイトル通り、生きた死んだの話も見え隠れしつつ、けれどひねらずに挑んだ恋物語
いつもの作品だって、ひねているようでひねていないのがこの作者流ではあります。
ありますが、それを差し引いても今回は本当に。
やられた。