『花狩のロゼ 歌姫は薔薇を殺す』(夕鷺かのう)

花狩のロゼ 歌姫は薔薇を殺す (ビーズログ文庫)

花狩のロゼ 歌姫は薔薇を殺す (ビーズログ文庫)

舞台は花が人を喰い殺す世界。
鈴蘭は毒を吐き、薔薇は絶望の名で語られる。
そんな世界で、花に対抗出来るのは『歌姫』と『舞手』のみ。
そして、歌声で花を縛る『歌姫』は女にしか務まらず、花を殺し得る武器を扱う『舞手』は男にしか務まらない。
されど、『歌姫』の才を持つ少年と、『舞手』の才を持つ少女。
二人の出会いから始まる物語。


と、まあこの辺りの設定でもう陥落。
これで好きにならずにいられようか!、という。
でもって、これがまだ序章なのです。


家の定めた婚礼で引き離される二人が、駆け落ちを決めたその時、襲いくる花嵐
喰い散らかされる人々、そして赤い絶望の中、姿を消した少女。
——かくして、残された少年は『歌姫』を志す。
彼女の名を受け継いで、『歌楽』と『舞楽』の学舎、楽院へと足を踏み入れるのである。
女装少年として!


以上、序章でした!
ここまでで本当にもうてんこ盛り過ぎる。
女装少年であることは、背表紙のあらすじにばばんとばらしてあるので、特に隠し球ではないのですが、あらすじ読まずに読み出したので、本編冒頭で盛大にふきました。
それでいいのか少年。
まあ、いわゆる女装少年とはちょっと違うわけですが……
楽院には女の子も所属しているところが違いますが、スタンス的には『聖鐘の乙女』の逆くらい、の感じで。
ともあれ、そんな少年・クロードの扮する一年生歌姫候補双璧美女が一人、『真紅の小鳥』ロザリアが主人公。
……男主人公、という分類でいいはずです。たぶん。きっと。
この辺の変化球は、作者らしいなあ、という気がします。


脇役陣もなかなか個性的。
君、クロード好きすぎるよね大丈夫?、という、序章から彼の従者として登場していたミュゲくんに、双璧美女のもう一人、『黄金の小鳥』ことベルガモットさん。
こちらの彼女、ライバルポジションではなく、なかなかいい性格したお友達としての立ち位置。
そして、少女めいた風貌の、謎めいた舞手の少年・ノワール
彼には秘密があって——とその辺りがお話としてはメインになってくるわけですが、そこは読んでください、ということで。
大変なことになっちゃった彼ら彼女らの、初恋の物語。


目新しい展開かと聞かれたら、そういうわけでもないのですが、とにかく盛りつけられた素材がどれもこれも素敵。
ここからだよ!、なところでの幕となっているので、これは是非とも続きが読みたい。
むしろ出なかったら大ショックなレベルです。
どうかちゃんと出ますように!