『リーディング 司書と魔本が出会うとき』(隼川いさら)

リーディング  司書と魔本が出会うとき (角川ビーンズ文庫)

リーディング 司書と魔本が出会うとき (角川ビーンズ文庫)

少女小説戦う司書……というと、ちょっとというかかなりというか、違うものとなってしまいますが、大きくくくってしまうならば、当たらずとも遠からず。
背表紙には「ダークファンタジー」なんて単語も踊っていますが、そこまでダークでもなく、わりとすっきり。
主人公であるリィナさんのキャラクタが光るお話でした。


落ちこぼれだけど異能持ち、というキャラ立てはテンプレながら、根っこの部分がしっかりしてたり、なかなか「強い」お嬢さんが主人公。
豆本作りが趣味だったりする辺り、シリアス成分抜きの短編で、本好きネタを盛大にやってもらえると、非常に面白いんじゃないか、という気がします。
むしろそれが見たい……のはともかくとして。
中盤、彼女を襲う展開はショッキングでした。
暮らしていけないとかそういうことではなくて、もう読めない、それがまず出てくること。
そんなバカなと果たして笑えるかどうか。
心底恐ろしい、だからこそ、そこからもう一度立ち上がる彼女は眩しく見えました。


展開としては、司書や本はどちらかというと添え物のアイテム、ネガティブな部分も含めての人間模様がメインの構成。
きれいごとだけで全ては回らないし、妬み嫉みがない現実なんてあるはずもなく。
そして、根幹を成す奪われた者、奪った者、されどただ復讐するには複雑すぎる人の心。
ラストにおけるそれぞれのキャラクタの扱いが、一つ象徴的かもしれません。


王子いなくてもなんとかなったような、とか、舞台を活かした展開をもっと見たかったな、とか、惜しい点もありつつ、その辺りはこの先どうにでもなる期待感を持たせてくれる作品でした。
素直に、この面々のこれからが見てみたい。