『RINGADAWN 妖精姫と灰色狼』(あやめゆう)

RINGADAWN - 妖精姫と灰色狼 (C・NOVELSファンタジア)

RINGADAWN - 妖精姫と灰色狼 (C・NOVELSファンタジア)

妖精はいます、でも魔法も魔物も勇者もいません。
さてでは「妖精」さえ存在する必要があったのか……とも。
その血統による国の在り方は重要な要素でもありますが、「文化」で説明つけられる範囲と言えば範囲で……と、その辺は本題ではないのでさておき。
かつて出会った少年と少女。
いささか血生臭い別れと年月の果て、それぞれの立場は囚われの姫と、それを救うために戦う少年となる、そんな構図です。
あくまで、構図としては。


助けるためではなく、単にかつて交わした「期待させろ」という言葉のために戦うのだとうそぶく少年。
正直、そんなに彼女のことを気にしているシーンがぽこぽこあるわけではありません。
姫君も姫君で、彼は死んだものとして別れた都合上、その存在をどうこう気にかけるシーンは終盤まで皆無、ただひたすらに己の才覚のみで立ち回ります。
夢見がちな何か、ではなくて、あくまでドライに自身を頼りに突き進む、というのはなんとなく似たもの同士ですが。


そんなこんなで、二人が終盤まで絡まない関係上、少年の方には姫様のお付きの侍女ポジションの人がついて回ることになるわけですが……この人がわりとおいしい。
タイトルには一ミリもかすってませんが、表紙にはいるし度胸もなかなか、下手をしなくてもお話的にはヒロインです。
最終的には重要ポストについてるみたいだし……


この辺りの妙なバランスとか、序盤の取っつきにくさ(誰が誰かぱっと把握しにくい)とか、少年は如何にして灰色狼となりしかとか、語り足りない部分はちらほらとあります。
それでも、最後まで連れて行ってくれる「何か」が、魅力なのだろうなあ、と。
どこがどう、と非常に表現しづらいのですが。