投げっぱなしジャーマン

明らかに疲れてるのがにじみ出てる感じで、どうかひとつ。



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「いっつも思うんだけどさ」


 不審そうな顔でひとの部屋を見回してから、先輩が言う。


「ここホントに君の部屋? 片付きすぎだよね?」
「それどんなミステリですか」


 そもそも、先輩を騙しても特にいいこととかないですよね。


「そこはほら、普段いじられてる仕返しとか」
「いじってる自覚はあるわけですね。へえ、それはそれは」


 やっぱり日頃の恨みが……とかなんとかぶつぶつ言ってるけど、そんなのはもう今更なわけで、わざわざどうこうする気にもなりません。よかったですね。


「ならいいけどさ。でもおかしいなあ、どうしてこんなに……」
「だから、床に積んだら負けなんですって。先輩の場合、もうどうしようもない気もしますけど。正直絶望的ですよね」
「うるさいよ!」


 ぺちん、と額をはたかれる。間違ったことは言ってないのに。


「寝る場所を確保するために整理するとか、どう考えても」
「う・る・さ・い!」


 都合が悪くなるとすぐこれだから。まったく。


「休み中なんだから、毎日マメに片付けるとか、がばっと読んで一気にどうにかするとか」
「休みだと、普段より増えるペースが早い気がするんだよね」
「……まあ、そんなことだろうと思いましたけど」


 人間諦めが肝心、世の中には手がつけられない人、というのがいるのです。


「あ、じゃあさ。届け先をここにして、君が片付けるのとかどう?」
「どう? って、それ僕にメリット何もないです」
「毎日僕が読みに来るよ!」
「来るなよ!」


 何故そこで無駄に笑顔ですか。


「え、なに、嬉しくないの?」
「ちっとも」
「ホントに?」
「まったく。全然。これっぽっちも」
「……ちぇっ」


 ……そんな顔しても何も出ませんからね!


「じゃいいよ、もう来ないから」
「別にそこまで言ってないじゃないですか。気が向いたら片付けに行きますよ。それで十分でしょ?」
「まあ、一応……」


 順調にめんどくさい人化していく先輩だけど、こういう場合は相手にしないのが吉。経験則。……なんでそんなのに慣れてるんだろう、とか考えてはいけない。どうせろくなことにはならないし。


「はいはい。結論も出たところで、それじゃお疲れさまでした」
「え? 今来たとこなんだけど?」
「いや、だから先輩は別にウチに来なくてもいいって話でしたよね」
「……君さ、僕のこと嫌いでしょ。本当は」
「さあ、どうでしょう」


 好きとか嫌いとか、そういう問題じゃないと思いますけど、ね。



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外野的総括。


「口ではなんとでも言えるわよね」


おあとがよろしいようで。