まだまだリハビリ

ところでたまには書いておかないと。
「実在の人物とは無関係です」
おわかり?



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「それで、何をどうやったら昨日買った本がもう行方不明になるんですか」
「理由がわかれば僕が知りたい」


 いつ来ても混沌の欠片満載な——ただし、これを集めて再構成しても、せいぜい住人のアレっぷりが明らかになるくらいだ——部屋の真ん中で、堂々と開き直ってくれやがった先輩の様子に、思わず頭を抱える。
 いや、わかってはいたんですよ。非を認めるとか殊勝な態度とか、そんなのが返ってくるわけないって。


「片付けないから、っていうのはさすがに聞き飽きましたよね」
「あーあー聞こえなーい」
「小学生か……」


 もう別になんだっていいですけど!
 まったく。買ったのが昨日なら、埋まってるっていってもどうせ浅いところなんでしょうけど……ここは甘やかすのもよくない、ということで。


「自分で探して下さい。じゃ、お邪魔しました」
「えっ」
「えっ、じゃないでしょう。それくらい自分でなんとかして下さいよ」
「だってさ、いつもならそりゃもう喜々として」
「捏造はどうかと思います」


 手伝ってはいますけど、嫌々です。ええ、そりゃあもう。最上級に。


「いいじゃん、減るもんじゃなし」
「減りますよ。なんかこう、大事なものが。たぶん」
「うそつき」


 ふん、そんなこと言われても痛くもかゆくもありませんよ、と。


「見つからないならあれですよ、もう一冊買ったらどうです?」
「やだよそんなの。どうせ買ったら途端に出てくるに決まってるし」
「その場合は一冊下さい。僕まだ買ってないので」
「あくまがいる……」


 先輩にだけは言われたくない台詞ですね、それ。自分の胸に手を当ててよく考えてみたらどうです?


「ん? こんなに出来た先輩なんてそうはいないと思うけど?」


 ……ええ、それに付き合うよく出来た後輩も、そうそういませんけどね。


「とにかく、今日は手伝いませんので」
「そんな……じゃあ見つかったら先に読んでいいから」


 なんかまたずいぶんな譲歩を。でも残念でした、今回それはご褒美にも何にもなりません。だって。


「そもそも僕、前の巻から積んでますから」
「ダメな人がいた!」
「こんだけ積んでる人に言われたくない!」


 がるるるる、と睨み合う二人。
 しばしの沈黙。


「……なんか悲しくなってきた」
「失言でした……」


 所詮は似たもの同士、積んでるだのなんだの、という話題は諸刃の剣でしかない。むしろ単なる自爆行為ですよね……


「はあ……もういいです。探しますから、代わりに適当になんか別なの借りますよ」
「別に、貸すだけならいつでもいいんだけど?」
「いいんです。ただ借りるだけとか、なんかしゃくじゃないですか」
「……わりとめんどくさいところあるよね、君」
「よく言われます。めんどくさいんですよ、僕は」


 ……でもって、そのめんどくさい人間になんだかんだと付き合ってくれるあなたは、いろいろとアレでソレなところもありますけど、まあ、よく出来た先輩なんですよ、きっと。なーんか認めたくないですけど。


「それで、どの辺から探せばいいんですか? あたりぐらいあるんですよね」
「いやもう全然。さっぱり」
「先輩……」
「そんなイヤそうな顔しないでよ! 僕も手伝うからさ」
「手伝うじゃねぇよ! アンタの本を探してるんだよ!」


 ほんと、アレでソレなところも多々ありますけど、ね!



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なんとなく外野。


「もう、そこで一回突き放しちゃえばいいのに! 障害を乗り越えてこそ、ってのもあるはずなのよう」
「修羅場が足りない」
「……まあ、人それぞれだと思いますけど」
「もっと仲良くすればいいのになあ」
「やあね、もう十分仲良しじゃない。むしろこれは素人にはオススメ出来ないレベルよ?」
「ふえ? だってなんかケンカしてるみたいだし……」
「するほど仲がいい、とも言う」
「男の子って難しいなあ……」
「いや、あんまりまじめに考えなくてもいいから、ね?」


だからなんだと言われても。