リライト的な
このネタは前やったよなあ、と思いながらも、別に以前書いたヤツを見返してるわけでもないので、扱いはよくわかりませんが。
ここのところ毎日そんな感じなので、どうにかしたい気はしつつ。
あ、あとなんかたぶん50になったかこえたかしました。
おめでとうございません。
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「これはこれで、読むのと違う面白さはありますよ」
はい、と今日の分のテキストを先輩に手渡す。物語と呼んでいいのか少々首を捻らざるをえないそれは、ここのところの放課後の日課めいた何か、だ。面白いのかどうなのか、ついでにこの行為に意味があるのかどうか、なんてことはさておいて、我ながらよく続いていると思う。
「はいお疲れ。んじゃ読むから待ってて」
「……先輩、前から言ってると思うんですけど、目の前で読まれるのはなんか、こう」
「気にしない気にしない」
どうせそう返されるのはわかってましたけど。
やれやれ、と思いつつ、椅子に腰掛けたまま両手を軽く上に伸ばす。んー、やっぱり何度やっても結構疲れるなあ、これ。
……で、それでも続けてる理由はと言えば……まあ、さっき言った通りになる、のかな。見返りとか出来をよくしようとか、そんなことじゃなくて、頭の中にある一枚の絵を形にする過程。それが他とは違う楽しみなんじゃないか、とこれは僕の個人的な感覚。
書きたいモノがあって、とかそんな話の方が健全な気がするけど、別にそこまで切実な何かがあるわけじゃない。だからきっと、いつやめたって全然おかしくないはず。なんだけど。
「よく書くよねこんだけ。ほんとにさ」
「えっと、ここ喜ぶとこですか……? あと、量的にはたいしたことないと思いますけど」
「分量って言うかさ、毎日きっちり書いてくれるとこって言うか……あ、それとごめん、ちゃんと面白かったよ」
こうさらっと言われてしまうと、毎度ながら気恥ずかしいやらなにやらで、どうも、とごにょごにょ小さな声で返すのが精一杯になってしまう。うー、未だにこの感覚には慣れない。出来たら出来たでそれでおしまい、見直しもなしに渡しちゃうもんだから、きっと本当の意味で最初の読者が先輩なせいだ。いやまあ、最初も何も目下のところ先輩以外の読者もいないんだけど。
「別にそんな、すごいことじゃないと思うんですよ、実際。やるかやらないかなだけで、誰でも書けるものだと思いますよ、お話って」
「そうかなあ……」
「そういうものですって。そりゃ、なんかすごいのとか大傑作とかは別かもしれないですけど」
お話っていうのは、きっと誰の中にもあるものだし、ただそれを形にするだけなら特別な何かなんて必要ない。その先を、理想を追い求めていくなら、それこそ本当に果てなんてない世界だけど。遠くに行く覚悟がなきゃ何も出来ないなんて、そんなことは絶対にない。
「先輩も書いてみたらどうですか? 面白いと思いますよ、たぶん」
「たぶん、ねぇ」
「無理にとは言いませんよ。先輩の場合、感想書くのもあるから時間的に微妙かもしれませんし」
「んー、まあそうだけど……ってあれ、君、ここでこれ書いてるのに読む量減ってないよね?」
「その辺は睡眠時間を」
「うわ、ない。それはないわー」
あの先輩、そんなひとを珍獣を見るような目で見なくても……そっちが規則正しく生活しすぎなんじゃないですか。
「だって体力とかないからね! 無理したら倒れるよ!」
「それ自慢するトコじゃないです」
はっはっはー、なんて笑ってるけど、もうちょっとくらい鍛えるなりなんなりした方がいいと思うな! 絶対!
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——とまあ、そんなだいたいいつも通りの、でもちょっとだけいつもと違うやり取りをしたその翌週。
「はい、書いてみたんだけど」
「え? ホントに……って多いな!」
どさっと手渡された原稿。ああうん、なんかわかるのはすごくわかる。感覚がつかめないと、際限なく続いちゃったりするからね。でもこれは……
「取りあえず読ませてもらいますけど……これどれくらいかかるのかな」
「いいよゆっくりで。待ってるから」
それじゃあ、と読み始める。ふむふむ、登場人物は……あれ? なんかどこかで聞いたような見たような。っていうかこれ。まさか。
「あの、先輩? これって」
「まあまあ、最後まで読んでから」
わかってる、そう言いたげな態度は、まずは言う通りにしなきゃ何も答えてくれないって意味なんだろう。仕方ない、それが文句になるかどうかはさておいて、感想は後回し、とにかく最後まで読みますよ、ちゃんと。
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——で。
「どうしてこうなったんですか」
「いざ書こうと思ったらどうしていいかわかんなくてさ。ちょっとアドバイスを」
「誰にですか……いえ、答えなくていいです。だいたいわかります」
脳裏に浮かんだ、その誰かさんの姿はひとまず置いといて。どうせ予想は外れてないし、そこを問い詰めて何がどうなるもんでもなし。
「で、登場人物のモデルが僕と先輩になった、と」
「いやいや、どこの誰とも何とも書いてないよね」
「そうですけどね? でもこれどう見ても」
「フィクションだってば」
まあしらばっくれますよね。うん、まあ僕も別にモデルにしたとかそんなことならいいんです。
でも、これは。
「……なんでこんなイチャイチャしてるんですかこいつら。しかもキャッキャウフフすぎる!」
「だーかーら、フィクションだって。それに男とも女とも書いてないじゃん」
「そうですけどね!?」
いらん小細工を! 何故いきなりこんな話をってああそうですね、素敵なアドバイザー様のせいですよね!
「結構需要あるらしいよ」
「だから! なんの! どこで!」
思わずくってかかるけれど、知りたい?、と聞かれるとなんだか気勢をそがれてしまう。というか聞きたくない。世の中には知らなくていいこともあるんだ。
「うぅ……これを他人に書かれるくらいなら、いっそ自分で」
「あ? 書く? いやーそれは楽しみだなあ」
「え、いやちょっと先輩?」
「この設定だったらいろいろ面白くなるよね、きっと。ほら、面白いは正義だからさ」
「はめられた……」
ことここに至っては、そう悟らざるをえない。ひとに書かせるのにそこまでやるか、とは思うけど。
「前にちらっといくつか書いてたでしょ、そういうの」
「……こんなに甘ったるくないですけど」
「それはまあいいじゃん。あれが結構好評でさ」
「あの先輩、なんかもう今更過ぎてあれなんですけど、もしかして僕が書いたヤツって」
「言ってなかったっけ? さる筋で絶賛公開中」
「……ですよねー」
それなりにファンもいるんだってば、なんて言われても、喜んでいいやらなにやら。本当に今更で、もうどうしようもないんだけど。
「それじゃ今日からよろしく」
「は? 今日、から?」
「あ、無理ならいつから出来るか教えて」
いやそれ無茶苦茶ですよね、とか、言いたいことはいろいろある。あるけど、どうせ通じないのは目に見えてる。
だったらやるしかないじゃないか!
「わーかーりーまーしーたっ! こうなったらもう覚悟しといて下さいよ。好きなように書いちゃいますからね!」
「うん、楽しみにしてる」
爽やかに返されると、また一段とこうムカッと来ますね!この人は! ふん、後悔したって知らないんですからね、先輩のばーかっ!
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〜今日の外野〜
「ん、びっくりするくらい作戦通りね。さすがあたし!」
「定期連載の枠が埋まってくれるなら、それで。……まあ、ご愁傷様って言ってあげたくなりますけど」
「書く方も書く方」
「いいなあ、楽しそうだなあ」
「あら、じゃあ仲間に入れてもらえばいいじゃない。三角関係ね!」
「え、別にそういう意味じゃ」
「誰が誰を、は気になりますけどそれ」
「天然たらしがいるからだいたいわかる」
「……やっぱりわたし外野でいいです」
「遠慮しなくてもいいのよ? 女の子は恋に生きなきゃ! 応援する!」
「いーいーでーすーっ!」
落ちてない。
でもきっと「本編」というヤツがあるなら、そんなノリ。
いい加減登場人物紹介いる気がしてきた。ぞ。