実際やめても怒られはしないと思う

続けるにしてもやめるにしても、どっちも理由はないんだけど。
んなー。
ということで今日の。



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「あっついなぁ……なんでクーラーないわけ?」
「ないものはないんです。贅沢言わないで下さい」


 ぶーぶー言いながら、扇風機の前に陣取る先輩。そこは譲りますけど、せめて首は回すようにしてくれませんか。僕が死にます。そのうち。


「もう一台扇風機買えばいいんじゃないの」
「無駄ですよねそれどう考えても」


 棘のある言い方をしてみたけど、先輩は扇風機に向かって『そーですねー』と棒読み発言。ワーレーワーレーハーウーチューウージーンーダー。……やれやれ。


「だいたい、文句言うならウチに来なきゃいいじゃないですか」
「しかたないじゃん。今僕の部屋アレだし」
「確かにひどかったですけどね……」


 足の踏み場もない、のはいつものことだとして、今日のはそれに輪をかけてひどかった。文字通りに本が雪崩れてるとでも言うか、まあ、ともかくひどいの一言。どうしてこうなったんですか、に対する答は単純。


『片付けてたらこうなった』


 いやこれ明らかに悪化してますよね、なんて正論が通じるわけもない。何故ならそれが先輩だから。


「やっぱ無理に片付けとかやっちゃいけないよね」
「普段からマメにやっておけばいいんですよ!」
「めんどくさいし。っていうかさ、もうあれ正直無理じゃない?」
「まあ……一度全部外に出しちゃうとかしないと、どうしようもない気はします」


 むしろ人が住んでるのが不思議なレベルですよねあれ。そんなだから、本の妖精とか本食べてるとか言われるんです。だいたいあってるけど。


「その時はさ、また手伝ってくれるよね」
「……イヤですって言ってもどうせ連れてかれるんでしょ」
「無理にとは言わないよ? 僕も鬼じゃないし?」


 嘘だ。
 まずその無駄に爽やかな笑顔が嘘だ。
 先輩はこう、なんかもっとこう、腹黒いと言うかなんと言うか……


「いいですけどね、別に。それでウチに押しかけてくる回数が減るなら、喜んで」
「なにさ。そんなに僕に来てほしくないわけ?」
「はい」
「即答!?」


 あ、なんか珍しくヒットした感じ。ふふん、僕だってたまには、


「……そっか。いいよ、それなら」


 もう来ないもんね、なんて投げやりに呟きながら立ち上がる先輩。
 ……う。いやでもここで引き留めたりするからつけあがるわけで、厳しくしつけないといけないときっていうのもあるわけで、ええと。


「じゃあ、ね」


 寂しそうに、ふっと笑って——ああ、もう!


「……冗談です」


 これがよくないのは、僕が一番よく知ってる。知ってるんだけど。それでも。


「ちょっと言ってみただけです。だから」


 このよくわからない縁は、わりと貴重なんだよなあ。困っちゃうことに。


「来たいときに来てくれればいいですよ。あんまりしょっちゅうは困りますけど」
「え? そうなの? ホントに?」
「……ええ、まあ。ただものには限度っていうのが」
「や、ありがとありがと。君ならそう言ってくれるって信じてたよ!」


 んじゃ今後ともよろしくねー、とにこにこしながら、またしても扇風機の前に戻ってくる先輩。
 ……はあ、こういう人、なんですよね。調子がいいっていうかなんていうか、もう!


「どうせ僕が悪いんですよね……」
「なんか言った?」
「いーえ、なんでも」


 結局、何の因果か一度知り合っちゃったのが運の尽き、なのかも。しょうがないよね。
 それじゃ、今後ともよろしくお願いします、先輩。
 ……あくまでも、ほどほどに。



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〜今日の外野〜
「あの二人って、ホント仲良しだよね!」
「仲良しって言うより、お互いの部屋に入り浸ってるだけであれよね。浪漫よね!」
「浪漫かどうかはともかく……まあ、まとめてつかまえやすいのは確かです」
「ただれてる」
「ただ、れ……? ふえ、どういうこと?」
「ん、いいのいいの、あなたは知らなくても。あーもうかわいいわあ!」
「……会長、ほどほどにしておいて下さいね」
「持ち帰りは禁止」
「ひゃっ! ちょっ、ややややめてくださいー!」


※外野は本当にその場で書いて投げっぱなしなので、往々にしてキャラがぶれるのはご了承下さい。