謀ったなでるたん
Dk本の校正が上がってきて、戦々恐々としながら見ていたのですが、話の収められてる順番にふきました。
やりおった、やりおったわでるため!!!
かの人は本気なのだと身にしみました。
もう知らないよ……
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「疲れた……」
ライブ会場を出た直後は、興奮冷めやらぬ、というテンションだったのに、気がつけばぐったりしている先輩。どれだけ体力ないんだろう……だいぶはっちゃけてたのは確かなんだけど。
「君これ、明日も行くの? よくがんばるね」
「だって二日間しかないんですよ? そりゃ行くに決まってるじゃないですか」
ここら辺は見解の相違というか、行ければいいっていう考え方と、行けるなら行けるだけっていう考え方の差になるのかな。当然ながら僕は後者。チャンスがあるなら逃すわけには。
「たとえセットリストが同じでも、やっぱり日が違えば別のステージ、ですよ。一回こっきりしかないからライブなんです」
生の方がえらい!、なんて言うつもりはもちろんないけど、やっぱりそこにはそこにしかないものがある……ような気がする。ただの気のせいかもしれないけど、そんなふうに感じさせてくれるだけで十分なんじゃないかな。きっと。
「ふうん……いろいろ考えてるんだ」
「まあ、一応は」
「あれだけ弾けてたから、なんにも考えてないのかと思ってた」
普段はあんなにぼんやりしてるのにね、とこのテンションでも一言多い辺り、先輩はどこまでいっても先輩らしい。ここまでくると、腹が立つ以前に安心するよね、なんか。しょうがない人だなあ、とかそんな感じで。まったくさ。
はあ、と溜息をついてから、なんとなく会話が途切れる。ほんの少し、どこか心地良い沈黙に浸りつつ、てくてくと二人して駅を目指していた……んだけど。
「ふぁ……眠い……」
「いやちょっと先輩、どんだけ疲れてんですか」
不意に口を開いた先輩は、ぐったりを通り越してなんだぐんにょりしていた。そんないくらなんでも……
「ごめんもう無理。駅まで連れてって」
「ヤですよそんなの! ……引きずってもいいなら連れてきますけど」
「ああもうそれでいいや……」
よくないよ! そもそも、先輩でっかいし引きずるのも大変だし。
「いいからほらがんばって下さい! 駅まで! 駅まで着いたら電車は寝てていいですから!」
「がんばる……」
なんでそんなに退行してるの、と言いたくなるけど、どうせ無駄なので仕方なしにその手を引いてきりきり歩く。ああもうしっかりして下さいよ、みっともないなあ!
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「……で、ホントに寝ちゃうしね、この人」
すったもんだでようやく電車に乗り込んだと思うやいなや、さっさと眠りに落ちる先輩。がたごと揺られるたび、ひとの肩にもたれかかってくるのがたいへんうっとうしくて仕方ないです。反対側は手すりでいくらでももたれられるのに、どういうことなんですか。わざとですか。
「それだけ楽しんでくれたってことかもしれないですけど」
やれやれと思いながらも、そうやってちょっと前向きに考えてみる。……前向きすぎる、かなあ。単にいつも寝る時間を過ぎてるだけ、かもなあ。まあ、別にどっちだっていいですけどね。だって。
「僕は楽しかったですし」
もちろんそれは、先輩がいるとかいないとか、そういうこと関係無しに、ね?
それでも、あの一度きりの時間を誰かと共有出来るっていうのは、全然、悪い気分じゃない。
「いつかまた行きましょうか、先輩」
そんな機会、あるかどうかはわからないですけど。
でもまあ、もしもあったら、その時はよろしくお願いします。とりあえず、今はゆっくりお休み下さいませ。
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もちろん同じ会場にたまたま来てる人たちがいて、お持ち帰りよ!、などと話題騒然でまあ!