再び迷走中
前も一回迷走したんですが、今回は明確に締切が終わった、っていうのが大きいのかなあ。
何か違う切り口を考えなきゃいけないのかしらん、と思いつつ。
そんなこんなの迷走中なので、内容的にはノーコメントで。
バランスって難しい。
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「こんなの送ってこられてもなあ……」
休日の優雅な読書タイムを妨害して下さった、先輩からのありがたいメールにグチを一つ。味も素っ気もない文面は、『はやくきて』の一言だけ。用件については何もなし、これでどうしろと。
おまけに返信してもなしのつぶて、ついでに直接電話してみても電波の届かないところに以下省略。まあ、これは無精だからたまたまメール出したところで電池が切れた、っていう線もなくはないんだけど。
「別になんだっていいんだけど、と」
そんなことを考えているうちに、気がつけば先輩の部屋の前。うーん、無意識にでもちゃんとたどり着けるようになっちゃってる、ってのはどうなのかなあ……なんかことあるごとに来てる気もするし。
「ちょうどいい機会だし、びしっと言ってあげようかな」
うんそうしよう、と一人頷きつつ、インターフォンを押し込む。ぴんぽーん、というどこか気の抜ける音を聞きつつ、ドアが開くのを待つ。
待つ。
……待つ。
…………待ってるんですけど!
「あれ?」
え、なにそれ。もしかして呼び出しといて留守なわけ? いくらなんでもそれは……あ、でももしかしたらここに来てほしかったわけじゃないってことなの? そりゃ僕の方だって場所は確認してないんだけど。
「そっちが連絡つかないのが悪いんじゃないか……先輩のばーか」
仕方ないので、一応電話をかけてみる。どうせ繋がんないんだろうけど……って、え? なんで着信音が部屋の中から聞こえるわけ? しかも出ないし!
「居留守……じゃないよね、いくらなんでも」
普通に考えれば、人に連絡だけしておいて、自分は携帯を部屋に忘れたうっかりさん、なんだろうけど。このまま帰るのもちょっと、なあ。それにあの文面。ひょっとしてひょっとすると、本題はおろか文字変換する余裕さえなかった、なんて可能性もなくはない、の?
「しょうがない、このまま帰ったらなんか寝覚め悪いし」
いつでも来ていいから、と半ば押しつけるように渡された合鍵。まさか使う機会が本当にあるとはね。
「失礼しますよ……ってあれ?」
本日二度目の『あれ?』ですよ、お客さん。いやお客さんって誰だよとかは置いといて。
……鍵回したら閉まったんですけど?
「不用心っていうか……もう、ちゃんとして下さいよね、先輩」
これはもうきっちりしっかり言ってやらないと。
あらためてそう思いつつ、今度こそはともう一度鍵を回してドアを開けると、そこは——
「これは、ひどい」
——別に雪国でもなんでもなく(そりゃそうです)、雪崩で玄関が埋まっていた。いや、雪崩っていっても、その、本の、なんだけど。でもなにこれどういうこと? 通る隙間もなにもないんですけど?
「先輩、いるんですか……?」
「……」
返事はしなかった。だけど、その雪崩れた本の山の向こう側から。
——確かに先輩の気配がした。
ええと、これってもしかしてもしかすると。
「入りますよ、入っちゃいますからね!」
ともかくまずは、この惨状をどうにかしなくちゃダメだ。まったく、と溜息をつきつつ、僕はその魔窟に足を踏み入れた。
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「……で、どういうことなんですか」
「いやさ、ちょっと派手に崩れちゃって」
積み直さなきゃ外には出られないしさ、なんてのんきに笑う先輩。ああもうどうしてくれようかこの人。
「手伝ってもらおうと思って部屋に戻ったら、部屋の方も崩れてきて」
「それで?」
「ちょっと埋まってた」
「アンタバカだろ!?」
だからいつも片付けろって言ってるじゃないですかさらっと言っちゃってるけど埋まってたとかありえないしどう考えてもダメでしょう危ないしまあ無事だったみたいだからよかったですけど! ですけど!
「……それでメールも電話も無理だった、と」
「ん? あーいやそれは、抜け出して起き上がるのがめんどくさくってさ」
「はい?」
「しょうがないから手元の本読んでたら気がつかなかった」
「先輩のあほ! ばか! おたんこなす!」
ここでぶん殴らなかった僕を誰か褒めてほしいです。いやだって、それはいくらなんでも。ちょっと。
「まあまあ、何もなかったんだからさ。じゃ、片付け手伝ってね」
「この……! この!」
もうぶつける言葉も見つからない。ええ、知ってましたよそういう人だって。それだから先輩なんですよね! ははっ、こちとらそれを承知で友達やってるんですよこんちくしょう!
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「はあ、もうこういうのは勘弁してくださいよね……」
「了解了解」
「だいたい、ついこの間片付けにきたばっかりなのに」
どうやったらこんな大惨事になるんだか。あれだけきちんと片付けたのに、とそこまで考えて、よもやの可能性が思い浮かぶ。
いや、でもまさか。いくら先輩でもそんな……
「あの、先輩」
「ああもうわかったってば。ごめんなさい、僕が悪かったです」
「いえそうじゃなくて……その、ですね」
「なにさ」
「……今度からは、もうちょっとひどくなる前に、気づいた時点で呼んでくださいね」
言外にこめた意味をくみ取ってくれたのかどうなのか、
「ん、わかった」
ありがと、と。先輩は短く答えるだけだった。
ええ、僕としてはわかっていただけたんならそれで構いません。わざとだとかそうじゃないとか、そんなこと全然気にしませんから。
だから、気をつけてくださいよ。こういうのは冗談で済んでるうちが華、なんですからね!