もう締切とかないんですけど

もはや何のためにやっているのか。
そしてごく一部方面では更に地下に潜って謎の悪ノリが止まらない。
二次元広大すぎる。



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「それだけ読む方が」
「いやいや、読んだ上で感想をきっちり書いてる方が」


 もう何度目になるのかなあ、というそんな会話。お互いに譲らないところなんだけど、外野に言わせると『二人ともおかしい』で満場一致だとか。そんなことないと思うんだけどなあ……いや、平均的だよとはさすがに主張しませんけどね?


「しかもその上ゲームはするしアニメは見るし、お芝居にもライブにも行くよね?」
「まあ、そうですけど」
「絶対おかしいよねそれ。……あのさあ」


 と、そこで、ずい、とこちらに身を乗り出して声を潜める先輩。やけに真剣な表情で告げた言葉は。


「一日が30時間あるって本当?」
「そんなわけないでしょう!」


 いったい僕をなんだと思ってるんですか。


「じゃあどうやったらそんなこと出来るのさ」
「そこはほら、睡眠時間削るとか?」
「ごめんそれ無理」


 ですよねー。規則正しく生活してる先輩ですもんね……


「でもよくそこまでがんばれるよなあ」
「別にがんばってるつもりはないんですけどね」


 そう、僕自身は無理をしてるつもりなんてない。そりゃまあ、大変だなって思うときもないと言ったら嘘だけど。


「だって、なんか悔しいじゃないですか。知らない物語があるって」


 これだけ物語があふれているこの世の中、全部を知るのが無理なのはわかってる。だけど、そこでわざわざ諦めてあげる必要だってないはず、なんだよね。絶対。


「これまでだって、こんなに好きになれる物語に出会えたんですよ? だったら、これからだってまだまだ出会えるんです、きっと」


 だから諦めたくないんです。進めるうちは進みますよ。前に。


「不毛ですけどね。終わりはないし」
「そっか」


 しょうがない、とでも言うように苦笑いしつつ、でも、と先輩は続ける。


「ずるいよなあ、まったく」
「何がです?」
「だから、そういう恥ずかしいことを言えちゃうところ」
「なっ……!?」
「いやー若いっていいよねー」


 そんなことを言いながら、意地悪な顔でくつくつと笑う。


「んじゃ、僕もちょっと見習って、今度何か行ってみようかな」


 ……ああ、まあ、それはいいんじゃないですかね。ええ。


「だからさ、連れてってよ。どこでもいいからさ」
「えぇ……それは自分で何とかして下さいよ。僕は自分が好きなとこしか行きませんよ?」
「それでいいんだってば。君が面白いって思うことなら、きっと僕も面白いって思うんじゃない?」


 その程度には信用してるんだけど、なんて、しれっと。
 ああもう、どうしてそういうこと言うかなこの人は!


「……そんなに言うんなら、考えときますけど」
「うん、期待してる」


 まったく……でもそうと決まったなら、ちゃんと面白いと思ってもらえるとこにしないとなあ。これは気合入れないと、と頭の中でスケジュール帳をめくり始める。あ、なんか楽しくなってきたかも。待ってて下さいよ先輩、きっちり期待に応えてみせますからね!