『大陸の王 四界物語3』(黒川裕子)
- 作者: 黒川裕子,黒葉.K
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/03
- メディア: 単行本
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これがもう一気呵成と言うか何と言うか、とにかく最初からクライマックス。
ここに至るまでにこれまでがあったのだ、と言わんばかりの展開でした。
それでも、振り返ってみるとわりと各巻で見える風景は違うなあ、という印象も。
どちらかといえば「静」の一巻に始まり、世界を広げつつ弓を引き絞る二巻(虎さんとか蛭蟲の辺りで、既に放たれているものはあるにせよ)、そしてこの「動」の三巻。
刊行間隔がちょっと空いてしまった関係上、すっと入りにくい部分もあって、続けて読むとまた印象は違ってくる気はしています。
戦を通して始めて見えたもの、向かい合えたもの。
趨勢自体は竜や六式といった、人の力の及ぶところではないものによって決められていく中で、決してきれいなだけではない人の想いや生き様が光ります。
この辺は脇役陣の主張っぷりがよく出ていたかなあ、ラルファンなんか特に。
一方で主役陣はといえば、二巻でどっかんどっかんデレまくった皇子さまですが、三巻も引き続き。
出会いや経験から覚醒する場面より、いちいちオファンを気にするその姿がいじらしすぎます。
エピローグなんかねーもうねー。
いつの間にって感じですよこいつら。もう!
それでも、シルッカはティー一筋なんですが。
……で、そう、いつの間に、なんですよね、いろいろ。
ここにきて、完結編らしく盛り上がって面白かったのは間違いないんですが、あまりにいろいろとここに凝縮されすぎ、という気も。
もうちょっと早くから見たかったエピソードもあれやこれやで、なんとももったいない。
三冊合本だったら、まただいぶ違った形で受けとめられたのかな、とも。
あるいはいっそもう一、二冊広げてみるとか……
折角の世界が広いやら狭いやら、どうもこぢんまりしてしまったようにも。
海上を駆ける馬を始め、ビジュアル面でも惹かれるものが多くあった今作、きっとどこかでもうちょっと何かが噛み合えば、綺麗な一枚絵になる作品を送り出してくれるような気がしています。