『C^3 シーキューブ XI』(水瀬葉月)

C3‐シーキューブ〈11〉 (電撃文庫)

C3‐シーキューブ〈11〉 (電撃文庫)

本領発揮、の11冊目。
その穏やかな時間と、救いと、苛烈な展開。
陰も陽もともに「らしさ」を十二分に発揮した今回は、ある意味でシリーズ最高傑作、なのかも。


フーガとかアポカリプス好きなんだよ、という人はまあ落ち着いて。
あれはあれ、これはこれ。
ちょっぴり過剰なパーツはあれど、ここまで来たからこそ出来る展開、でもあるわけで。
これまでにもこの手の展開はあったものの、今回は明らかにもう二歩三歩踏み込んだ印象。
やはりこういう「甘いだけではない」切り返しは、この人の持ち味だよなあ、そう思うことしきり。


序盤はいつものお気楽なノリから入りつつ、これまでにない形での敵との取引。
そして、敵でもなければ味方でもない、生贄羊の役回りたるニルシャーキをめぐるフィアをはじめとした面々のやり取りは、何かが変わることを予感させてくれる、じんわりと温かいものでした。
自分たちがそうであるように、望んだ道を望んだように生きること、誰しもそれを望むことは間違いではないのだ、と。


その展開を踏まえた上での、終盤のバトルと種明かし。
ただ痛々しいのではなく、さながら試練のように、彼ら彼女らを試すようなそれ。
何者であり、何処に立っているのか。
この先に、もっと険しい道は控えているであろうことも、どこか予感させる物語でした。


なんかこう、本当にようやくここまで来たなあ、と感じる展開。
ここから始まるものもまた、確かにあるんじゃないだろうかと。
その辿り着く先を是が非でも見たいと、そう思います。