『スメラギガタリ 〜新皇復活編〜』(宇野朴人)

大正の息吹を残したまま発展した、呪術国家としての日本。
語られるは、呪術が飛び交い魑魅魍魎に式神が刃を交える、恐ろしくも芝居めいた一幕。
やることなすこと口にすること、そのすべてがわざとらしいまでに大仰なれど、故にこれは素晴らしき娯楽である——


と、そんな感じで。
いやいやこれは楽しかった。
アイドル皇族に、陰陽寮・在野の術士の二大トップはどちらも美少女、寡黙な武人にべらんめぇな名太夫、とキャラクタの方も大盤振る舞い。
これなんで電撃で出さないのん?


陰陽ノ京も含めて、陰陽モノはMWなのかしらん。
いやでもこれ、ちゃんと少年少女が主役だし、それこそイラストの力で売り込んでもいいと思うんだけどなあ……
ともあれ、怪しくも痛快な活劇。
大義と正義の対立は、もうこの人の作風なんだろうなあ。
譲れないもの守るべきもの、その上で曲げられない己の意志。
どちらにも肩入れしたくなる、そんな魅せ方。


ただの陰陽バトルだけでなしに、三枝介という存在がいたからこそ産まれた語り口と芝居っけたっぷりの展開も素敵。
もうこのわざとらしさがたまらない。
ノリノリでラストまで突っ走る楽しさは、この厚さが逆に嬉しくなるほど。
……だからこそ、ラストに続の文字があって、なんだと、という気分にも。
確かにこれだけやらかして、要の彼のエピソードは匂わすだけで一向に……と思っていたらなんとまあ。
しかし、逆に言えばまだ読めるのだと前向きに考えることも。
続きがなかったら泣くけど。


さて、今回で将門編はきっちり終わりになるかと思いますが、次からどうなるか。
この構図はもういろいろな意味で使えないわけで、引っ張ってくれた夜統くんエピソードが開けてびっくり玉手箱的に、ぐぐいと周囲を巻き込んで盛り上げて欲しいところ。
けっこう、かなり、本気で期待。