『ユメオチル、アリス』(鮎川歩)

ユメオチル、アリス (ガガガ文庫)

ユメオチル、アリス (ガガガ文庫)

アリス・イン・ワンダーランド、ただしナイトメア、みたいなっ!
……というと若干齟齬はありますが、そこまで大外れでもなく。
現実から逃走した先は、なんでも出来る夢の中。
けれど、いかな夢であろうとも、その根底にあるのは自身の無意識に他ならず、故にそう、この物語の副題は、 WONDERLAND IN ALICE。


全体的に鬱々としたお話、です。
結論としてはものすごく分かりやすいところに着地する辺り、妙に現実的だったりもするのですが。
逃避なんてそうそう出来るもんじゃない、どうしたっていつかどこかで向き合わなければならない。
それならどうするのか。
無理でもなんでも、そこに「希望」という夢を見てもいいじゃないか、と。


や、そりゃ精神論でどうにかなるなら、とまず思います。
思うのですが、極限まで追い詰められたとき、本当に必要なのは、まずその余裕なのかもしれません。
当たって砕けて壊れてしまうのではなくて、まずは一呼吸おいて、それこそすべって転ぶバナナの皮で事態をまるっとどうにかしてしまうような、そんな開き直りを、と。


主人公たるアリスくんの問題は、正直それでどうにかなるレベルをぶっ飛んでる気もしますが、変な話、青少年のお悩み、というのは時にそういうものであるのも事実。
いま、あなたが見ている/目を逸らしているものは、なんですか。
そういう問いかけ、なのかもしれません。


さて、そういうアレな話は置いとくと、結局ルルディはなんだったの、というのが残ります。
ボクと契約して完全明晰夢の世界に来てよ!
……とまれ、あちらの世界の存在意義とは何か。
続刊があれば、その辺にも話は飛んでいきそうですが、さて……