『やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。』(渡航)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 (ガガガ文庫)

プロモーションがどうだったこうだった、とかそういう話は、きっとえらい人がしてくれるのでおいといて。
前シリーズからがらっと作風を変えての新作、ということで、期待半分不安半分でしたが、蓋を開けてみたらやっぱりしっかり変化球でした。
王道ネタを扱いつつも、要所でのちょっとした視線の違いが見られる辺りがこの人らしさ。だと思います多分。
諸々の関係ではがないが並べられることになるのかと思いますが、むしろこれはそれとはちょっと違うテイストの何か、ではなかろうかと。
いずれにせよ、心配は単なる杞憂であったわけで、これは売れるに違いない、あやかしがたりと一緒に買おうぜ!(諸般のお約束的にテンプレ


さて、主人公の比企谷くんです。
このヒネ方がまた、こう、なんと言ったらいいのか。
分かりたくない、でも分かっちゃうくやしい!、という。
もう本当にやーなくらいに理解出来るひねくれ方で、こいつめ!こいつめ!ごめんなさい!
こういうダメさは今まであまりなかったなあ、と個人的に。


ヒロインズ、及び男衆はわりと分かりやすい感じなのですが、そこで光ってくるのが「リア充」担当の二名。
作品の方向性というか内容というか、その辺りを踏まえると、リア充という表現は必ずしも正しくはないのですが、便宜上ここはそうさせてもらいます。
で。
その葉山・三浦ペアが非常によいのです。
過度にいい人でもなくわるい人でもなく、教室にいる「うまくやってる」人たち。
当たり前ですが、彼ら彼女らだって人間であり、「うまくやれていない」人たちの敵でもなんでもない。
機会とタイミングさえあれば、仲良くなれないわけじゃないんだよ、と。
単に、リア充爆発しろ!、の怪気炎を上げるだけではない、この作品の魅力の一端は確かにあの二人が担っていると感じます。
やーまー日陰者から見ると眩しいのも確かだけどさー。
お蝶夫人ちょっとこわいけどさー。


そしてラスト。
一連の流れを「青春ラブコメ」であると自覚しつつも、まちがってる、とぼやけるその視線。
これもまた、彼の、ひいてはこのお話自体の、ちょいとヒネた魅力の一つではないかと。
そう、これは残念でもまちがっていても、確かに「青春ラブコメ」なのです。
彼ら彼女らの未来に幸いあれ!