『丘ルトロジック 2 江西陀梔のアウラ』(耳目口司)

例によって「枠に収まらない」人たちのお話。
狂っている、のではなく、ただただ単にたがが外れている。
誰もが想像しうる「常軌を逸した」行動の、更にその一歩先二歩先へ、なんのためらいもなく踏み出せる、そんな在り方。


そういう作品だからこそ、日常パート全開の序盤が楽しい限り。
これはこれでいろいろとおかしくはありますが、この作品の「本性」を考えればかわいいもの。
というかそれなりに青春してらっしゃいますよね、咲丘くん。
いいじゃん、ロック(でおバカ)な幼馴染み。
そしてこの人たち、なんだかんだ言いつつも、事が起きなければそのまま平穏に過ごしていそうな気がする。
ぐだぐだした短編もありだなあ……
導火線は非常に短いので、火がついた瞬間には爆発するのもほぼ間違いなしとして。


そんな序盤は序盤として、日常と異常が背中合わせどころか一体化している舞台である以上、あれやこれやと「オカルト」なことは起こりつつ、しかし物語の核心はそこになく、ひりつくほどの圧倒的なまでの意志こそが主役なのも変わらず。
正しいか否かではなく、すべてを賭けられる/信じられるものがそこに。
それこそまさに、喰うか喰われるか、我を通したければ戦って打ち負かすより他になく、諦めや妥協なんて介在する余地はない。
どこまでも一筋に迷いなく破綻する、その信念。
そのくせ、そこからシームレスに日常回帰出来るあの在り方こそ、このぶっとんだお話の魅力、なんでしょう。


キャラ方面に目を向けると、部長の属性はわりとうっちゃっておいた感じで、タイトル通り江西陀メイン。
あの緩急はまーずるいというか、なんというか。
噴火あり停滞あり、まあ目が離せない人ですこと。


ところでドッペルさんと聞くと、『匣庭の偶殺魔』を思い出してしまって、つまりスニーカーミステリなむなむ……