『wonder wonderful 下』(河上朔)

wonder wonderful 下 (レガロシリーズ)

wonder wonderful 下 (レガロシリーズ)

ああ、もう。本当に何を言えばいいのかな、そう思ってしまうほどに、衝撃的で、情熱的で、眩しい物語。
リアルタイムではないにせよ、このお話にふれられたことを、しあわせに思います。


下巻、ということで、当然上巻を踏まえての話となります。
結構、いろいろしんどかった上巻でした。
守りたいものは同じでも、それぞれの視線の高さ・見えている世界の違いや、「正しさ」の基準のずれから繰り返される衝突。
どうして分かってくれないの、という押しつけではなく、互いが互いに考えて考えて、それでもぶつからなくちゃいけない、というつらさ。
でもそうやって踏み込んできたからこそ、おぼろげに、あるいは時に不意打ちのようにはっきりと見えてきたものは確かにあって。
想いを伝えること、受け止めることの意味を教えてくれました。


そして下巻です。
これまでつちかってきたものが花開くとき。
決してただ楽になったわけじゃなく、ある意味で今まで以上の緊張感はあるし、踏み込んでしまうが故の怖さもある。
それでも、ぐるぐると回り続けていた事態が動き出す、それが分かる展開はどうしようもなく楽しくて、嬉しいものでした。
エンジン全開のコカゲ、中盤でこぼれ落ちるその弱さも、それを「見せられるようになった」と考えることも出来て、正負の感情が入り交じって苦しいやら嬉しいやらぐっときます。
終盤にある最後の山も、彼女を信じて任せた一同のように、不安な気持ちはあれど、大丈夫と見守ることが出来ました。
本当、ひとはいつからだって変われるのだと、進めるのだと、上巻の時も思いましたが、ここでもあらためて。


エピソード的には、それぞれの恋模様もありますが、ここは四の五の言うのも野暮なので、「落ちる」感覚を存分に味わってください、とだけ。
いやあ、もう、すごいよね。
ひとを好きになる、ってこと。


総じて。
ひとがひとを想う、ということ。
いいことも悪いことも、楽しいことも苦しいことも、素敵なことも逃げ出したいことも、何もかも全部、全部全部全部、たいせつなことは、全部そこにあります。
それを斜に構えるではなく、等身大の女性の視線で、真っ直ぐに力一杯投げ込んできてもらいました。
受け止めるのがしんどい部分もあります。
それでも、最後の一球まできちんと受け止めた上で、ピッチャーマウンドに向けてこちらも力一杯投げ返したい気分で胸一杯、です。
奇しくもそれは、コカゲの言葉とも重なるのですが。
ありがとう、と。
読み終えて、今、間違いなくしあわせです。


……で、これが恐ろしいことに(!)、まだ番外編があります。
続けて読んだらどうなってしまうか怖いので、ちょっと間を開けてから、またこの厳しくも優しい素敵な世界に帰ってこようかと思っています。