『ムシウタ 11. 夢滅ぼす予言』(岩井恭平)

ムシウタ11.夢滅ぼす予言 (角川スニーカー文庫)

ムシウタ11.夢滅ぼす予言 (角川スニーカー文庫)

「受け継がれる」物語。
それが、シリーズ開始当初から変わらない核だと思っています。
今回もまた然り。
すべての始まりから持ち越されてきた因縁と、未来への願い。
様々なものが失われ、形を変えて誰かに引き継がれていく。
そういう、物語です。


さて、それはそれとして。
例によって入りは前巻と繋がってるんだかどうなんだか、という唐突感。
この辺も変わらないですよね……ある種潔い気もする「その巻ごと」のエピソード仕様。
ともあれ、特環中央本部の襲撃、というややショッキングな出来事から始まり、なんだかんだと言っても主役なんだぜ、のかっこうさんメインでお話は進行。
霧に包まれた赤牧市、意味深な光景、どこか不可思議な空気……と、この辺は読み手としてみると、つまりどういうことなのかはわりと序盤で見えてきます。
ただ、だとしても「それ」が如何にして起きたのかについては、想像以上に苛烈。
果たしてそこに悪意があったのかすら定かではなく、しかしこれもまた「受け継がれるもの」の一つ、なのでしょう。


今一度語られる一号指定の意味も同じく。
やや余談ながら、キャラクター紹介に利菜がずっと載り続けているのがすごく好きなんですよね。
そこにちゃんと意味があるんだよと、そう思い続けてきたし、今もまだ思っています。
閑話休題
不死とはつまりどういうことか。
彼女の見方はこじつけであると同時、確かに一面の真実でもあります。
不滅の存在、その概念。


続く決戦でも、テーマはやはり受け継がれることの意味。
ここらは語ると野暮なので、それぞれの「現在」を見ていただければ。
あえてあげるなら、拳銃をぶっぱなすだけじゃないかっこうさんの格好良いこと。
そしてそのまま、最終決戦へ向けてのフリ(これがまた凶悪)で幕引き。
これでまた間があきまくったら泣けます。


以下は本当に個人的な想い。
こんだけ終盤盛り上がってるのに、いまいち盛り上がりきれない自分がいました。
理由は分かりすぎるくらい分かっていて、即ち「彼女」がいないから。
これまで語られた様々から、まず間違いなく戻ってくるのは分かっているだけに、だからこそその時がなかなか来ないのが苦しい。
次こそは、あるいは少なくとも最終決戦の場には、最高に格好良い出方での登場を信じています。
眠り姫、モルフォ蝶の再来を。