『犬とハサミは使いよう』(更伊俊介)

犬とハサミは使いよう (ファミ通文庫)

犬とハサミは使いよう (ファミ通文庫)

果たしてあなたはタイトルのみでこの内容が想像出来るだろうかっていうか出来るわけないだろ!こんなの!
という感じで、前情報もあらすじも見ずに読んだら盛大にふきました。
いろいろおかしい。


まずプロローグがふるってます。
これにびびっときてしまう人はお友達になれます、一緒に果てのない物語摂取生活にダイブすべきです。
さあさあさあ。
A・S・A・P、あずすーんあずぽっしぼるですよ!
……閑話休題
ほほう、タイトルからはさっぱりだけど、本好きの話なのか……と思っていると、速攻で雲行きが怪しくなってきます。
そしてほんの5ページのそれを読み終わる頃には誰もが気づくでしょう。
——ああ、バカ話なんだな、と。
だいたいあってる。


あらすじにもある通り、主人公は序盤でいきなり死にます。
ゾン……じゃなくて犬になります。
ここらを深く考えてはいけません。
犬になります。特に理由はない。
でもって、傍若無人のヒロイン・シザーウーマンの夏野さん。
こちらも別にハサミを持っている必然性は何一つなく、ラストに至るまで特に語られるエピソードもありません。
Sだからとかそういう理由で片付けておきましょう。
大丈夫だ、問題ない。


メインはこの一匹と一人の掛け合い。
……なので、それが始まるまではちょっと空回り気味のもっさり感はあります。
ありますが、始まってしまえばノリよくテンポよく、しょうもない会話ががんがん繰り広げられて引っ張ってくれます。
ノリだけじゃ、という人向け、でもないですが、ちょっといい話エピソードもちゃんとあります。
七割はノリで走り続けますが。
もちろん、背表紙あらすじの「ミステリ系」とかいう文字列は見なかったことにして下さい。
「不条理コメディ」でほぼ説明は完了していると見て間違いありません。


殺人犯がいるんだもの、バトルの一つもやっておかねば、なバトル展開は、よく考えるまでもなくいろいろおかしい技の応酬。
それがくそまじめに繰り広げられる様は、まあやっぱりおかしいのですが……盛り上がります。
エピソード的にもクライマックスの、そこが山かと思いきや、終盤も輪にかけていろいろおかしいです。
いらねーじゃねーかこの展開!、と言いたくなるかもしれませんがこの無意味さがもはや逆に楽しい。


つまるところ、ほぼ全編通じて不条理というかバカなノリで突っ走る系統です。
盛大に笑い飛ばして、ああ楽しかった、と。
そう感じられれば幸せ、という結論できっとOK、たぶんOK。
……そして。
無駄に誇張されつつも、物語を、本を、愛する人間がわりとその辺にいることも、ネタでいいので頭の片隅にでもおいていただければ。
追いつけないと分かっていても追いかけたくなるもの、アプローチは人それぞれですが、そこに大切な何かがあるのは間違いないのですから。


っていうか誰か飼ってくれないですかねー。
ご飯はあまり与えなくても大丈夫、一日二冊か三冊の本でよく懐きますよ!
ただし飼い主に対するリターンは何もありませんがね!