『0能者ミナト』(葉山透)

0能者ミナト (メディアワークス文庫)

0能者ミナト (メディアワークス文庫)

まず口が悪い。
当然のように性格も悪い。
やることなすこと腹立たしい……のだけれど、結果は出しているし、その眼差しは時々優しい。
本当に時々だし、当人は何があろうと認めないのだけれど。


とかそんな感じで、適度に悪人な主人公様が、ちょっぴりずれた良心担当の二人を引き連れて怪異退治をするお話。
性格がさらに悪くなって、おまけに素行も悪くなって、かつ(今のところ)大きくバックボーンを背負っているわけでもないどこぞの心霊探偵、といえば合ってるような間違っているような。


なんて言うと八雲さんに失礼なのでさておき。
ああ、悪人になりきれない悪人っていいよねぇ。
なんだかんだと言いながら、結局がきんちょとお嬢ちゃんの面倒も見ているし、その「悪さ」故に、他人の思考の裏が読める。
舌先三寸のやり口からすれば、それは大いに武器だろうし、ついでにいざとなれば身体を張るのも辞さない辺りも、言っちゃあ何だけどもはやカワイイの領域。
いい子いい子。


お話的には、「いかにも!」な二話のえぐさがいい感じ。
悪意、あるいはその真逆にある感情にぶつけた時こそ、彼のようなタイプのよさが出る、といういい例。
おかげさまで振り回される良心二人がいるわけですが、これもでこぼこトリオならでは。
逆にいつか、二人が彼を助ける光景も見られるんじゃないかな、とこれは個人的な期待。


個人的な期待といえば、やはり過去話も見てみたいところ。
どういう経緯であの三人がつるんでいたのか、若かりし頃の彼はどういうやり口だったのか。
いろいろと想像の余地がある、ここいらも魅力の一つ。
幕の下ろし方から、まず確実にあるだろう続刊を楽しみに待ちたいところです。
あとがきで触れられていた、9Sも含めて。