『特急便ガール!』(美奈川護)

特急便ガール! (メディアワークス文庫)

特急便ガール! (メディアワークス文庫)

さる事情にて、勤め先を飛び出すことになったキャリアウーマン(語弊ありというか多分死語)が、伝手で転がり込んだバイク便会社・ユーサービス。
そこで言い渡されたのは、事務職かと思いきや、免許もないのにライダー業務。
負けん気の強さで売り言葉に買い言葉、颯爽とがむしゃらに走り出す彼女の運命や如何に——
というところまでであれば、手渡しハンドキャリー便が届ける、荷物以外の何か、をテーマとした物語、なのですが。
もうひとひねり入ります。
届けられるものにだって、行きたい場所はあるのだ、と。


ということで、あらすじにもちょっぴり触れられていますが、ファンタジー要素込みでのお仕事奮闘記。
要素的になくても成立させることは可能だったと思うのですが、あえてそこに放り込んだのはチャレンジ精神、と考えるべきでしょうか。
ここらは好みの分かれるところでもあって、それこそIWGPなんかのようなトラブルシューター的展開も当然選択肢にはあったはず。
ただ、枚数や表紙に見て取れる疾走感を優先した結果なのかな、と思います。
いやまあ、もっと単純に、電撃から流れてきた人向けの要素、なんて身も蓋もない話もありますが。


ともあれ、その「ひとひねり」で、地に足つけて走るところを、思い切って高く踏み切った印象の一冊。
個々のエピソードにやや弱さも感じるところがあり、もうちょっと踏み込んできっちり描いてもよかった(逆にそういう意味ではヴァンダルの方が「丁寧」かも?)のかなあ、などと。
好きなだけに、手放しで万歳!、とはいえないこのもどかしさ……